映画『名もなき野良犬の輪舞』応援記事置き場

2018年5月公開の映画『名もなき野良犬の輪舞 (原題:不汗党) 』応援用ブログです。翻訳は素人です。

【ビョン・ソンヒョン監督インタビュー】ミステリア 13号[後編]

ビョン・ソンヒョン監督インタビュー

出典:雑誌『ミステリア』13号  2017年7月発売

前半:

themercilessjpf.hatenablog.com

 

全体にネタバレを含みます!!ご鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

*雑誌内容を基にしての抜粋・要約になります。

*前編からの続きになります。 

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■主要キャラの三角関係以外にも、囚人たちが互いにおんぶをしたり体を寄せ合う等、男性間の親密な結びつきを直接的に表現する描写が目についたが。

例えば『狼/男たちの挽歌・最終章』では、ダニー・リーがチョウ・ユンファを愛していないと説明がつかないと思わせられる行動を取るだろう。『不汗党』でも単なる兄弟愛では説明がつかない状況が展開される。そのため男性間のスキンシップやメロ描写を継続的に強調したかった。それでも、『不汗党』を本格的なクィア作品だと規定することはできない。そう見られることに拒否感はないが、ただクィア要素をある程度入れたというだけなので、むしろ恥ずかしく感じてしまう。僕はこれがヒョンスの成長記であり、ジェホの初めての片想いの話、ジェホの罪の意識についての話だと考えた。ジェホはヒョンスを愛したことで、初めて罪の意識を持つようになったんだ。

ヒョンスは悪人ではないが、実は100パーセント道徳的な人物というわけでもない。キム・ソンハンの拷問シーンでも、ジェホに言われるまま行ってしまうのではなく離れたところから見届けるような人間だ。それでもジェホがヒョンスについて「善良(素直)」と表現するのは、彼がヒョンスを崇高な存在として見ているからだ。ジェホの目にだけは、ヒョンスが善良かつ神聖に見える。そういう隠喩的表現をあちこちに仕込んだ。ジェホがビョンガプに言う「(ヒョンスは)お前や俺のような人間には死んでも理解できない」、ヒョンスがミンチョルに言う「(ジェホは)お前なんかの手に負える男じゃない」、これらの台詞はそれぞれ二人が互いをどう考えているのかを表したものだ。

 

■ジェホが出所したヒョンスにロシア美女ナターシャを「プレゼント」する場面に関して。以降のストーリーと比べると異質に感じられる場面でもあり、多くの韓国映画に出てくるように「穴」を介して二人の男が繋がる、という表現と捉えられかねない場面でもあるが。

最初のシナリオではその場面での性的なジョークをもっと強めに書いた。しかし撮影後、観客が不快に感じるのではと考え、悩んだ。彼らが赤いスポーツカーに乗って走り抜けるシーンの直後にチョンチーム長が登場し、ライターを点ける場面に繋げなければならなかったが、スポーツカーのショットを抜くとリズムが崩れてしまった。元々余分なカットを撮らないタイプなので他に入れ替えられる素材もなく、気に入りはしなかったが、映画的リズムのために入れる他なかった。

 

やおい/BL文化に親しんできたか。

『新しき世界』公開後に、チョン・チョンとイ・ジャソン関連のファンフィクションに触れたのが初めてだった。(二次創作が活発に作られる)現象自体が面白く、創作者としてパク・フンジョン監督が羨ましかった。

 

■ハン・ジェホの第一印象はけたけた笑うふざけた人物だが、次第に彼は絶対に手の内を明かさないのだと分かってくる。

ジェホが刑務所で電話するシーンがある。本来台詞のないモンタージュカットだが、その撮影の際に何でもいいので台詞を発してみてくれと頼んだら、ソル・ギョング先輩が突然声を上げて笑い出したんだ。その笑い声がとても良かった。元々ジェホの台詞には、彼が下品に見えないよう、悪態があまりない。恐ろしさではなく親しげな軽薄さで人を制してしまう雰囲気が欲しかった。なのでより大きく、頻繁に笑ってくれるよう頼んだ。元々ジェホの癖として耳を触るというのを考えていたが、笑い声がその代わりになった。ソル先輩は撮影に入るとき、準備してきたものを一度全部見せてくれるタイプだ。その中から僕がこれだと思ったキャラクターを掴み出せば、後はそれをしっかりと掴んで進めてくださる。撮影の間に完全にジェホを体系化されたようだった。

キム・ソンハンに対して挨拶をする場面でも、「そんなにかしこまる必要ないよね?」と言って、その通りに抑揚なく読点を置かない口調で演じていた。ビョンガプを殺す場面でも、元々はビョンガプがナイフを持った手をゆっくりと下げていく予定だったが、ジェホがネームプレートでナイフを押さえて取り落とすという演技になった。終盤での僕の仕事といえば、先輩が癖で前かがみになる度に「もう少しまっすぐ」と声をかけてあげることだけだった。

 

■拷問シーンで苦しむキム・ソンハンを見物するハン・ジェホの表情が衝撃的だが。

あれは完全にソル先輩が作り上げたものだ。小さな子供が好奇心に満ちた目で見つめるような表情で、自分も見ていて肌が粟立った。

 

■コ・ビョンガプは序盤に暴力的かつ衝撃的な姿を見せるが、その印象とは異なり、実際は一番繊細かつ純情なキャラクターだ。

ヒウォン先輩には最初、ありふれたキャラクターだという理由でシナリオを断られた。しかし説得してもう一度読んでもらうと、「ビョンガプ役をやる。ビョンガプはジェホを好きなんだと考えて演技する」と言ってくださったので、本当に驚き、嬉しかった。代わりにビョンガプが同性愛者だという設定をむやみに劇画化しないやり方を取ろうと話し合った。

編集でカットした中にビョンガプとジェホの会話シーンがあるが、ヒウォン先輩がビョンガプのキャラクターをどう捕らえたのか、そこに明確に表れていた。二人がトッポッキ店に行く前のシーンで、ビョンガプがジェホを覗き見、肩に触れ、ジェホが振り返ると素早く手を引っ込めるという内容だ。ディテールが非常に良かったが、作劇のリズムのため編集過程で抜くことになった。スタッフに人気の高い場面だったため散々文句を言われた。

 

■チョ・ヒョンス役にイム・シワンをキャスティングしたのは見事な采配だ。このキャラクターをどう作り上げたのか。

「お前は痣まできれいだ」という台詞そのまま、美少年であること、それから善悪が共存しているイメージが必要だった。シワンさんがキャスティングされたことで、前半のヒョンスを少しいたずらにひとを振り回すようなイメージに変えた。シワンさん本人は非常にしっかり準備をしてきてくれたが、自身のイメージがノワールジャンルに合うか心配していたためか、演技のトーンが少し重かった。軽くいこうと伝え、最初は訝しげだったが、『タチャ』のチョ・スンウさんの演技を例に出すとすぐに理解してくれた。

だがスタッフ間から、序盤でヒョンスが単に軽薄なだけの人物に見えはしないかという声が上がった。チェ船長のアクションシーンからヒョンスの変化を見せようという作戦でいたものの、僕はそれで少し動揺してしまった。しかしシワンさんは動じず、「僕は何も心配していません。僕らが考えた通りで合ってると思います。もしよっぽど心配になったらおっしゃってください」と言った。彼の方が芯が強かったんだ。

僕は特に泣く場面などで見た者の感情を引き寄せる演技というのがシワンさんの一番の強みだと考えているが、シワンさん本人は、演技において本心がこもっていたかを最も重視する。例え傍目には分からなかったとしても、もし自分の感情が作り物だったと感じればそのテイクには満足しない。他者を騙しながら演技するスタイルではなく、一回一回にエネルギーをすべて注ぐ。テイクを重ね俳優のエネルギーをすべて出し尽くした後で新しいものを引き出そうとする監督もいるが、僕は温存させる方が良いと考えるタイプで、ソル先輩もシワンさんも最初に見せる芝居が良かったので、テイクを多く重ねはしなかった。

 

■刑務所の廊下のシーンは『不汗党』において最も美しくロマンティックで、ジェホとヒョンスの感情を台詞なしで具象化させたシーンだ。どう構想したのか。

二人の間の感情を少し幻想的に見せたかった。暗がりに吸い込まれていくようなヒョンスのイメージなどを考えており、『キャロル』や『ドライヴ』のような映画、特に『ドライヴ』のエレベーターでライアン・ゴズリングキャリー・マリガンがキスするシーンを思い描いた。だが、暗くなる中で二人が顔を合わせた瞬間再び光が差すという照明のタイミングがなかなか合わず、チョ・ヒョンレ撮影監督とパク・ジョンウ照明監督が非常に苦労していた。観客の皆さんが気に入ってくださったのならよかったが、思い描いた画を正確に具現化できなかった場面なので残念だ。

 

■普通ノワールでは青灰色や黒のトーンを強調するが、『不汗党』で深く印象に残るのは暖かなセピアトーンだ。

ヒョンスとジェホが一緒に映る場面は温かな雰囲気にした。なので刑務所の衣装も茶色だ。チェ船長のアクションシーンでは寒色のトーンを使ったが、そこでもヒョンスとジェホが一緒に大男を倒すとき、蛍光灯が割れて暖色にトーンが変化する。グレイッシュなノワールという一般通念から脱したかった。暗い場所も無理に明るくはしなかったが、ソル・ギョング先輩の表情をどうしても見せたいシーンに限っては、トーンを少し上げた。

 

■ヒョンスが母親の死に慟哭する姿を見つめるジェホのカットが二回登場するが、前半では憐れむような表情、回想ではより冷徹な表情を浮かべている。前半の表情は偽りなのか。それぞれの視点の主体は誰か。

まず意図として、ジェホが後天的ソシオパスであろうという点がある。母親の知らせに慟哭するヒョンスを見て、そんなに苦しむのか、そんなに辛いのかと実際に驚いたのかもしれない。回想での表情は彼の心の中だけのものかもしれない。もちろんその逆と見ることもできる。

 

■この映画は例えば空間背景が釜山であるのに釜山訛りがほぼ出てこない等、通常の韓国ノワールと異なりリアリティに対するこだわりが見られない。

韓国ノワール映画の中でキム・ジウン監督の『甘い人生』が一番好きだ。ああいうスタイルの無国籍映画を撮りたかった。さらに「バターの匂い」(*異国的な雰囲気)を少し出したかった。

スタッフには、背景は釜山だがロケ地は釜山でなくていい、釜山を象徴するものが見えない方がいいと伝えた。ロケハンで苦労して写真を撮ってきても僕が「韓国っぽすぎない?」と何度も突き返したので、スタッフは「監督が求めるような場所は韓国にはない」と泣き顔を見せた。結局セットの活用率が高い映画になった。

ゲガードクラブに関しては、ハン・アルム美術監督のアイデアで完成した。クラブ場面のコンテ作業に行き詰まって相談していたら、海辺のクラブなら冷凍倉庫の地下にあるという設定はどうかと提案してくれた。その言葉で一気に解決した。ジェホとヒョンスの間に性的な緊張感が流れるシーンも、どこか閉ざされた空間ということしか見えていなかったが、それなら冷凍製品を運搬するエレベーターだとすぐに決まった。

しかしそうしてセットの比重が高くなったことで終盤制作費を節約しないといけなくなり、撮影順序の都合で最後に撮った刑務所のセットを縮小せざるを得なかった。本来は一番作りこみたかったところだ。元々、カメラが空を映しているところに大きな足の影が入りこんで刑務所に向かうというショットがあった。それでジェホとヒョンスの紹介に繋げる予定だった。動物園のライオンのようなジェホと、そこに初めて足を踏み入れた、尖った爪を隠した幼いネコ科の動物のようなヒョンス。その弱肉強食の感じを紹介する場面だったが、計画通りに撮影できず残念だった。

 

■『不汗党』を完成させる過程で一番プレッシャーを受けた場面、また絶対に変えられないと思った場面はあるか。

エンディングに関しては意見が分かれた。内容自体が問題なのではなく、演出をこうも淡々と進めてもいいのかという点に疑問の声があった。ワンシーンワンカットで、人によっては退屈に感じるかもしれないくらいなので。当初は再撮影すべきではないかという話も出たが、編集版を観て制作会社もこのままで良いと同意してくださった。

 

■エンディングに関して、見方によっては「想い叶わぬ二人」を強調するために周辺の人物が皆死ななければならなかったという、ある種お手軽な悲劇という批判もあり得るだろうが。

最初はヒョンスが一番最初に死ぬエンディングも考えた。僕はヒョンスだけ生き残ったことが、勧善懲悪だとかハッピーエンドだとは思わない。あえて言えばハッピーエンドなのはジェホの方だ。むしろあれはジェホが望んだ、彼が廃ビルに向かいながら思い描いていたエンディングだったのではないか。ヒョンスの「俺を殺さないならあんたが死ぬ」という言葉に対してジェホが彼を殺さないことを選んだこと、「俺のような失敗はするな」と言い残したことも、色んな意味に捉えられるようにしたかった。

恋人関係において別れというのは、一方にとっては望ましいエンディングであり得る。この破局によって肩の荷を降ろせたのはジェホの方で、何か背負うことになったのはヒョンスの方ではないか。車の中で横たわるヒョンスの最後の表情が、できるだけ死人のように見えるようにしたかった。死んではいないが生きてもいない姿を想像した。ヒョンスは最も罪の意識を感じるやり方でジェホを殺し、これからその罪の意識を抱えて生きていかなくてはならない。

 

■興行に関して、「一般的な共感帯」形成には届かなかった一方で、非常に熱狂的なファンダムを得た。

(暫し躊躇してから)興行的な結果については罪責感がとても大きい。とてもしんどかったが、周囲がいつも良い反応をチェックして教えてくれて、非常に有難かった。

 

■次回作は金大中の参謀を主人公とした70年代大統領選挙の政治スリラーと聞いたが。

シナリオを書き終えた状態だ。地域感情がどう作られ加工されていったのか、大義のために盲目的な道徳的優越性を占有することは正しいことか、などについて語りたい。ひとまず僕が今やりたいと考えている話はそれだけだ。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

本記事の無断転載及び無断使用、引用元を明記せずの無断引用を固く禁じます。

【ビョン・ソンヒョン監督インタビュー】ミステリア 13号[前編]

ビョン・ソンヒョン監督インタビュー

出典:雑誌『ミステリア』13号  2017年7月発売

原文:

中間までは下記リンクにて公開されているため全文訳、以降はキム・ヨンオン編集長より許可をいただき、雑誌内容を基にしての抜粋・要約になります。本記事の掲載をご快諾くださったキム編集長、及びご協力賜りましたキム・ヒョジン教授にこの場をお借りして御礼申し上げます。진심으로 감사드립니다!

1boon.kakao.com

 

本記事は全体にネタバレを含みます!!ご鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

*前編・後編に分かれております。

 

 

心捕らわれた人々。『不汗党』ビョン・ソンヒョン監督インタビュー。



『不汗党』は、様々な理由から多くの映画を想起させる作品だ。アラン・マックアンドリュー・ラウの『インファナル・アフェア』、マイク・ニューウェルの『フェイク』、パク・フンジョンの『新しき世界』、ジャック・オーディアールの『預言者』、アン・リーの『ラスト、コーション』や大島渚の『御法度』まで。どこかで見たように感じさせる設定は、その馴染み深さ故に物語への取っ掛かりとなる安全装置でもあり、一方で陳腐な反復作としてフィルモグラフィ上の汚点となる可能性もある。

そのスリリングな綱渡りにおいてビョン・ソンヒョン監督の潜入捜査ノワール『不汗党』は、定型を捻り、変奏を加えるという戦略は、どのようなやり方であれ一定の成功を得られることを立証してみせた。すなわち『不汗党』は、潜入捜査官の不安感を排除する代わりに切実なメロドラマを物語に引き込み、作品をこれまでの韓国ノワール映画には見られなかった情緒で埋め尽くしてみせたのだ。

公開前はカンヌ国際映画祭への招待作に選ばれたことで注目され、公開直後は映画外の論難を浴び、少し時間が過ぎた後は本作品に愛情を注ぐ熱烈なファンダムが話題になって再び関心を集めていた映画『不汗党』に関して、長く沈黙を守ってきたビョン・ソンヒョン監督と対面し、質問を投げかけた。


-前作『青春とビート、そして秘密のビデオ』と『マイPSパートナー』を観ると、男たちが交わす日常的な駄話のディテールが引き立って見える。俗に言う「タランティーノスタイル」というか、男たちが休みなく、キャッチボールのようにくだらない会話を繰り返す場面のことだ。

映画における無意味な会話が好きだ。初稿でたくさん書いておいて、一番面白いと思う部分だけを残して減らしていくやり方を取る。実は、『マイPSパートナー』では個人的に後悔している台詞がいくつかある。今振り返るとマッチョイズムが強く、女性卑下的なものが多かった。一昨年のクリスマスイブにテレビで『マイPSパートナー』を放送してくれたので、公開後初めて観たのだけど、恥ずかしくなった。特にマッチョイズムが強く出る台詞を多く割り振られていたキム・ソンオ先輩が、とても実感をこめて演じてくださったので、一層そう感じられたんだと思う。

-『青春とビート』での「人は100%明るみに出た過ちについてしか謝罪しない。面白いのは、その過ちが表に出るまでは罪悪感をほんの一欠片しか感じないってことだ。状況は何も変わってないってのに」というソ・チャンデ(ポン・テギュ)の台詞が、『不汗党』のチョン・インソクチーム長の台詞「過ちは表に出るまで過ちじゃない。こんなクソみたいなことにぶち当たったのが間違い、それこそが悪なのよ。半端な罪悪感なんか抱くんじゃない。でないと自分から破滅するだけ」に発展したようだった。登場人物が犯した過ち、失敗、罪を正すタイミングを逃し、それによってその後の道筋が完全に歪んでしまうという展開があり、『青春とビート』は『不汗党』を予言する作品だったのかもしれないと感じた。罪悪感についての映画というか。

僕は罪悪感を強く感じる方だ。そのせいで幼い頃から苦しめられ、後悔も多かったので、そういう点が映画を作るにあたって影響したのかもしれない。
自分はシネフィル出身ではないと思う。映画を本格的に、意識して観るようになったのは演出を専攻しようと決心してからだったが、フラッシュバックが上手く使われている映画は観るたびにとても映画的で面白いと感じた。短編を作りながら少しずつ自分でも試みて、フラッシュバックで話を紐解いていくやり方に少し自信がついた。それからも映画でフラッシュバックが用いられているのを見かける度に、例え映画自体はイマイチでも、トランジションの部分に関してたくさんメモを取り、どうしたら活用できるか思いを巡らせた。

-『不汗党』は最初から「非日常的」な映画でもあり、彼らのやり取りする台詞も前作とはまるで違うトーンである必要があった。その変化を試みながら、どのような覚悟だったか。

『不汗党』がそれまでの作品とまったく異なっていたわけでもない。一番最初に撮った短編はノワールに近かった。これまで短編3本、長編3本を撮ったが、その中で一番の変わり種は『マイPSパートナー』だ。あの作品を書くまではロマンティックコメディを観たこともほとんどなく、興味すらなかった。特にキム・アジュンさんが演じた役の台詞を書くのに苦労した。僕なりに悩みながら書いたが、あまりに「男性的な台詞」だったと後になって気付かされた。ロマンティックコメディ映画を一生懸命研究して、どういうタイミングでどういう台詞を言うと観客の反応が良いのかを学んだ。

-では、潜入捜査ノワールのどのような面が魅力的だったのか?

パク・フンジョン監督の『新しき世界』を観て、韓国でもこういう映画を作れるんだと思った。周りからは似たような映画を作れば失敗するぞと止められたけど、僕は違うものを撮れると突っぱねた。元々『インファナル・アフェア』などの潜入捜査ものを好きだったけれど、いつも気になることがあった。ああいう映画の共通点はアイデンティティに関する葛藤じゃないか。『フェイク』のジョニー・デップアル・パチーノ、『新しき世界』のチョン・チョンとイ・ジャソンの関係を見ながら、「僕ならそのまま話してしまう気がするけど何で隠すんだろう?職業意識がそんなに大切なのか?」という疑問が浮かんだ。僕は相手との関係をもっと大事に思うので、僕なら告白してしまいそうなところだけど、物語としての面白味のために最後まで正体を隠しているのだろうかと考えた。もし潜入捜査官が自分の正体を途中で明かしてしまえばどうなるだろう?一連の潜入捜査映画をもう一度見返してみたが、そういう展開は見つからなかった。それなら僕が、一度そういう展開を持ち込んでみよう、その上でメロとしての描写で話を語ってみようと考えた。
多くのノワール映画、例えばマーティン・スコセッシの『ミーン・ストリート』であるとかデヴィッド・クローネンバーグの『イースタン・プロミス』を観れば、誰でも男たちのメロ、クィア映画の側面を感じるだろう。『不汗党』でもメロを中心に据えたかった。友情や義理としてラッピングされた「ブロマンス」ではなく、誰が見ても、肉体的愛とまでは言わなくとも感情的な愛を感じ得る関係ということだ。スタイルだけでなく感情的な側面から、どう既存の潜入捜査ものと違う作品を撮るか悩み、多くのメロ映画に当たった。もちろん周りからは、ジャンル的な約束事としての芯のある緊張感が失われることに関して懸念の声があったが、僕は逆に潜入捜査官の不安感が入り込むことを警戒し、思い切って省略した。

-もう少し詳しく聞きたい。「潜入捜査官のアイデンティティの混乱」という要素を抜きながらどう話を続けるか、という観点において愛という感情を選んだのか、もしくは最初から愛という感情を中心に据えようと考えたために「ヒョン、僕は警察だ」というヒョンスの台詞が早々に登場することになったのか。この台詞は映画において一時間も経たないうちに登場する。

メロを表現することが一番重要だったが、感情的にどうメロとして感じられるか、という点に関しては大いに悩んだ。実は『不汗党』は、ハン・ジェホとチョ・ヒョンスが交流する場面がそう頻繁には出てこない。二人の間で何かが重ねられていく場面を省略したため、彼らの感情の流れを観客が飲み込めなくなってしまうのでは、と思った。だからハン・ジェホとチョ・ヒョンスが碁石はじきをする場面などは、撮影前日にさっと台本を書いて新たに差し込んだんだ。だが「ヒョン、僕は警察だ」以降二人の間がどうやって深まったのかについては省略し、観客たちに想像してもらえるよう余地を残そうと考えた。あの場面の後観客は当然疑問を抱くだろうが、それに関して、「まさにこれ」という解答を提示したくはなかった。次の場面で解が出てくるだろうと感じさせながら、その答えをずっと後に引き延ばして話を紐解いていくやり方を取れればと思った。

-通常潜入捜査ものでは、正体を隠した主人公を中心として、彼を利用する者、疑う者の間での力学関係が次第に強力な、複雑な様相を呈していく。ところが『不汗党』に関しては、時間が進むほどに話を単純化させ、ジェホ-ヒョンス間の感情へと集中させていった。話の核心を、ジェホがヒョンスの正体に勘付くかではなく、ヒョンスがジェホの正体に気づくかどうか、それにより二人の関係が破局を迎えることになるのか、という点に置いた。

最初構想したときはヴィランの役割、つまりコ・ビョンチョル会長の比重がより大きかった。実際シナリオを書いてみると長くなりすぎたので、取捨選択の必要があった。ヴィランの存在感を大きくして葛藤を増幅させるよりは、ジェホとヒョンスへ集中させる方を採った。チョン・インスクチーム長に関してももっと話に介入できる余地が大きかったが、エンディングはジェホとヒョンス、二人だけの感情によって幕を下ろさせたかった。これは『ロミオとジュリエット』のような話だと度々言及したのもそのためだ。
もちろん異なる意見も多かった。例えばエンディングシーンがもっと派手であるべきでは、『レオン』でもレオンがマチルダを救うために大掛かりなアクションを見せたじゃないか、という意見が出てきた。だけど僕は、アクションを最低限にして、ジェホとヒョンスが互いに顔を合わせどういう会話をするか、どういう感情が行き交うかにより集中すべきだと考えた。

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以降は抜粋・要約になります。

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■チェ船長の事務室のアクションシークエンスの後、ジェホとヒョンスの会話を(盗聴装置を通して)盗み聞きするチョンチーム長に関して。

チョンチーム長が二人の親密そうな会話を聞くことが、ヒョンスに袋を被せて拉致するテストの場面に繋がっていくよう設定した。二人の会話を真剣に聞くというよりは、雰囲気を薄っすら感じ取る感じだ。微笑ましい会話の直後にヒョンスがチェ船長を残忍に暴行することでアイロニーが生じ、チョンチーム長から見て、ヒョンスがジェホ化していっているのではと疑うようになる。もちろんヒョンスの母の死の真相について知ったときから疑ってはいただろうが。ヒョンスが駒としてまだ有用かを見極めるためにテストを行い、それをもってようやく「こいつはまだ使える」と決めるんだ。

チョンチーム長は通常「中堅男性俳優」が演じそうなキャラクターだが、それを女性にした理由、またチョン・へジンがキャスティングされたことによって変わった点は。

深い理由があって女性と決めたわけではない。女性的な要素を排除することにむしろ注力した。家族のエピソードも存在したが、すべて削除した。女性キャラクターを書くと、その女性がどうやってこの地位まで上ってきたか、男たちとの関係においてどう動くのかという点に関して無闇に説明してしまいがちになるが、そうはしないようにした。チョンチーム長が一人の独立した人間として見えるよう願った。
チョンチーム長の描き方に関しては悩んだ点が多かった。チョン・へジン先輩がキャスティングされたことは本当に幸運で、先輩とは非常に多くの話を交わした。彼女はオーラがとても強い人で、男性と立ち並んだとき十分に力があるよう見せることができた。初めはチョンチーム長もヴィランとして、荒々しく頑強なキャラクターと考えていたが、撮影が進むにつれもっと鋭く、シャープな人物であるべきだという考えに変わった。下品な悪態を吐くビョンガプ、必要とあらば敵対する人間に熱した油をかけるジェホに対し、力対力、金槌対金槌ではなく、尖った針のような人物であるべきだと考えた。平面的な悪党としては見せたくなかった。それを最初のうちは掴めずにディレクションを中間から変えたため、へジン先輩を混乱させてしまい大変申し訳なかった。

チョンチーム長というキャラクターに関しては、それでもなお、もっと勉強しなければならなかったという後悔がある。船の積荷から麻薬の代わりにアダルト製品が発見され彼女が男たちに冷やかされるという場面があるが、安直で安易な選択をしたと思っている。一方で、大抵はああいう展開をクライマックスに配置するケースが多いが、そうはしたくなかった。非常に手短に終わらせたかった。

チョンチーム長のパワーやカリスマを表現するに当たり、チョン・へジンの演技トーンは荒々しいものではなく、声もむしろ静かで落ち着いている。そのため観客としてはチョンチーム長のことを、映画序盤において「理性的だ」「正しい人間だ」と錯覚することになる。

撮影の際は声のトーンがもう少し強かったが、ADR(アフレコ)で下げてもらった。映画を観てそのトーンが良いと感じられたなら、すべてへジン先輩の功績だ。ヒョンスに「お母さんの腎臓、探してあげる」と言う場面では、親しみを込めた言い方をしてほしいと頼んだ。このキャラクターが本当に正しい人物なのか混乱させたかった。

個人的に一番後悔しているディレクションは、ジェホを轢いた後チョンチーム長がハンドルを掴んで首を垂れるシーンだ。あそこはもっと冷徹であるべきだった。自分がしたことに関して迷いを見せてはならなかった。この映画には、ジェホがコ・ビョンチョルを殺すときに明かりを消してから銃撃戦を始めたように、ある種見栄を張る部分がある。チョンチーム長もそのようにすべきであり、倒れたジェホをただ淡々と見つめて車を降りるべきだった。あの場面でチョンチーム長が突然人間的になってしまったので後悔している。

■麻薬密輸の襲撃が失敗に終わった後、チョンチーム長がヒョンスとジェホの写真を眺める中で何かを悟ったような表情を浮かべる。ここで彼女が何を察したのか曖昧に感じたが。

あの写真に特別な意味があるというよりは、写真をじっくり見ているうちに、ジェホとヒョンスの間に生まれた感情のおかげで自分が一杯食わされた、と悟ったんだ。

元々は襲撃失敗後、チョンチーム長が男性浴場に押し入ってビョンガプを宥めすかし情報を引き出すという場面があったが、写真を見ながら状況を推察するほうが良さそうだと考えて削除した。

浴場シーンは少しコミカルで、エンディングへ疾走する感情の流れが途切れかねなかった。またその場面を無くすことで、ビョンガプが(濡れ衣によって)より無念に死んでいくように見せたかった。そうしてこそ、ビョンガプの殺害場面でジェホが崩れていっていることをより強く見せられるだろうと思った。

■最初の印象とそれ以降に明らかになるキャラクターが異なる人物が多く、ギャップが興味深い。例えば(刑務所の)保安係長は、暴力的な状況であっても全羅道訛りのおかげで口調が物腰柔らかく感じられる。

保安係長を演じたチン・ソンギュ氏は、「キム・ソンハン派に通じるキャラクターだから全羅道訛りが必要だ」と伝えたら(訛り方を)何バージョンも完璧に準備して来られた。さらに潔癖症という設定も提案してくれた。ジェホと揉み合った後で係長が手を消毒するというのは彼のアイデアだ。元々は煙草を吸う設定だった。ジェホとヒョンスに脅迫される場面でファブリーズを振りまいてからソファに座るというのも、彼が提案してくれたものだ。本当に面白かった。僕は元々そういうディテールが好きなんだ。

 

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*後編に続く。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

本記事の無断転載及び無断使用、引用元を明記せずの無断引用を固く禁じます。

【ソル・ギョング受賞論評】2017年韓国映画評論家協会賞

ソル・ギョング氏のお誕生日を記念して、2017年10月に彼が韓国映画評論家協会賞主演男優賞を受賞した際の、映画評論家 ソン・アルムさん(ちなみに不汗党員だそうです)による「受賞理由」論評を翻訳しました。

なお翻訳は『不汗党』に関する部分のみ抜粋しております。ご了承ください。

また『不汗党』本編に関するネタバレを多分に含みます!ご鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

 

ソルグさんHappy Birthday!!

 

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 映画『不汗党』においてハン・ジェホが、いや、この人物を演じる俳優が重要である理由は、彼がこの映画のジャンルを新たに打ち立てられる存在でなければならなかったためだ。一見潜入捜査ノワールを標榜したように見える『不汗党』は、映画がおよそ半分を過ぎたところで警察が自身の正体を告白するという点において、これ以上このジャンルとしてストーリーを進行させることには興味がないことを明らかにする。これによりソル・ギョングの前に投げ出された課題は、自身が警察だと告白した男性と行動を共にするにあたって妥当なる理由を提示することとなり、彼は「男男ケミ」「ブロマンス」などのような、明らかに存在する感情を希釈する単語では表しようのない、ただ愛という言葉によってのみ説明可能なまなざしと行動でもって、その解を差し出してみせた。同年代の俳優達が見せる歩みと比べ完全に突出したソル・ギョングの選択は、彼がそれだけ自由であったからこそ可能なものであった。ソル・ギョングは時には切実さでもって、時には荒々しい振る舞いでもってハン・ジェホを描き出し、近年の荒唐無稽な男性性の系譜にあるキャラクター群とも分離した興味深いキャラクターを誕生させ、また愛に誤った者の痛みまでを浮き彫りにし、俳優として新たな道を切り開いた。今や彼の名前の前には、2017年『不汗党』が新たな修飾語として深く刻まれることだろう。

平凡さゆえに常に体を酷使し、違う人物のように見せる他なかったという彼の言葉は、ハン・ジェホをもってその信憑性を失った。『不汗党』で彼が見せてくれた俳優としての鋭敏さは、あらゆる瞬間そこにあり、彼を変化させ、こちらの目を開かせた。今後も彼が誰も予想できない地点に存在することを祈り、今再び受賞を祝う。

<文:ソン・アルム>

 

出典:

 

翻訳:@TheMercilessJPF

本記事の無断転載及び無断使用、引用元を明記せずの無断引用を固く禁じます。

【ビョン・ソンヒョン監督インタビュー】スターニュース 2017/5/16記事

ビョン・ソンヒョン監督インタビュー

出典:スターニュース 2017/5/16

原文:

本記事は全体にネタバレを含みます!ご鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

 

 

 

ビョン・ソンヒョン監督が伝える『不汗党』A to Z

 

ビョン・ソンヒョン監督(38)。ソウル芸大の映画科を卒業し、公募展の賞金を狙って書いた『マイPSパートナー』がいきなり映画として製作されることになり、商業映画監督としてデビューした。 幸運だった。 その幸運に足を引っ張られた。演出のオファーにはロマンチックコメディ作品ばかりが溢れ、他のジャンルの映画をやろうにも『マイPSパートナー』の監督であるという点からなかなか受け入れられなかった。
(2017年5月)17日に封切られる『不汗党』は、そのため困難を極めた。シナリオを書いている段階から周囲に止められた。製作も、投資も、キャスティングも、ある一つ簡単にはいかなかった。そんな苦労の末に作られた『不汗党』は、いきなり第70回カンヌ国際映画祭に招待された。幸運だ。ビョン・ソンヒョン監督にとって幸運は出し抜けに訪れるが、その幸運はまた、新たな挑戦の始まりでもあった。『不汗党』に訪れた幸運は彼にどんな結果をもたらすであろうか。すでに今年観るべき韓国ノワールとして名を挙げられる『不汗党』について、項目ごとに尋ねた。

-『マイPSパートナー(2012)』後、『不汗党』の発表まで楽な道のりではなかったが。

▶公募展用に賞金を狙って『マイPSパートナー』を書いた。当時低予算の長編映画を準備していたが、『マイPSパートナー』の演出提案をもらった。こんな機会はめったにないと周りに背中を押された。だがロマンチックコメディーでデビューしてみたら、カラーの異なる映画をやるのが難しくなった。本当に長い期間待機した。その間、ロマンチックコメディーとヒューマンコメディーの提案を多くもらっていた。なので『不汗党』を書いてみたいと話したとき、周囲にも反対する声が多かった。

 

-『不汗党』は潜入捜査官として刑務所に潜入した刑事が、そこで麻薬組織のナンバー2と出会うことで起こる出来事を描いた映画だ。 こういうジャンルは参考となり得る作品がかなり多いが。

▶潜入捜査官の話は『新しき世界』を観て勇気をもらった。韓国でもこういう話を映画で作っていいんだ、という考えを持つようになった。だが周りからは、『新しき世界』のまがい物と言われるだろうと反対を受けた。だけどそのまま書いた。そして『マイPSパートナー』で組んだプロデューサーと一緒に、投資者を説得しようと歩き回った。簡単なことではなかった。「こんなのをやれる監督か?」そういう反応が多かった。 

 

-『不汗党』はかなりスタイリッシュだ。撮影は『4等』のチョ・ヒョンレ撮影監督、美術は主に時代劇をやってきたハン・アルム美術監督。これはビョン・ソンヒョン監督が『不汗党』のコンテについて、(美術面での)明確な理解があることの表れだろうが。

▶『不汗党』はとてもありふれたジャンルであり、話だ。なので次の二つの点を強調した。まずはスタイルが命だ。そしてこういう潜入捜査ジャンルでは、潜入した刑事が常にアイデンティティを巡って苦悩するだろう。自分は刑事か、犯罪者か。『不汗党』ではそれらをすべて省いて始めようと思った。
プリプロダクションの3ヵ月間、ずっとコンテ作業を行った。撮影監督とコンテを練り、合間合間に美術チームも参加した。 僕が撮影と美術について全く知らないので、「これできます?」と尋ねながら、大学のサークル活動みたいにみっちりと討論しあった。チョ・ヒョンレ撮影監督は『4等』で見られる通り、クラシックな撮影をする方だ。なので僕があまりに行きすぎると抑えてくれた。実際の撮影現場では、撮影監督のほうがより多くアイデアを出したりもした。

 

-カメラの構図が漫画のコマ割りのようなものがかなり多い。ソル・ギョングが刑務所長と会う場面などは、コマの外から中をのぞき見るような構図だが。

▶元々漫画が好きだ。観客が『不汗党』を漫画を読むように観たらいいと思った。そういう距離の置き方をしたため、『不汗党』にはマスターショットがあまりない。なので早く撮れもした。リアクションショットがあまりないので。一方では、そうやって撮ってこそ100%自分の意図した通りに編集できるだろうとも考えた。ソースがなければ編集で何かを付け足しようもないから。『マイPSパートナー』のときはどうにも自分の意図とは異なるものが編集で付け加えられたりしたので。だがそれでもなお、編集で異なるバージョンが出たりもした。
クローズアップもできるだけ控えた。表情を見たくとも、見せずに想像させるやり方が好きだ。俳優があまり「僕は今悲しいです、僕は今嬉しいです」と見せすぎてしまわないことを望んだ。人物がどう動くかをより見せたかった。もちろんソル・ギョング先輩の演技を見ていると、自分でも気づかないうちにこれは見せないと、と思う場面がいくつも出てきたりもした。だがそうやって増やしてしまったため、後になって、元の計算通りにやればよかったという気持ちになった。

 

-漫画を連想させる場面がいくつかある。偽造文書を作る水産業者を襲う場面だとか。

▶『スラムダンク』や『クローズ』のような漫画が好きだ。武術監督に、水産業者襲撃の場面は『ろくでなしブルース』の一場面を持ち出して、こんな風に作ってくださいと伝えた。主人公たちが大阪で相手高校と取っ組み合う場面だ。ホ・ミョンヘン武術監督は『アシュラ』をやった方で、『不汗党』でも『新しき世界』のエレベーターシーンのようなアクションを考えてらしたようだ。なのであまりに浮いてるんじゃないかとおっしゃるので、「このアクションシークエンスは、ソル・ギョングとイム・シワンがまるでクラブに遊びにでも来たような雰囲気」でやってくれとお願いした。ソル・ギョングが「ダーリン、俺が来たぜ(字幕:ベイビー お待たせ)」と言いながら一発で敵を殴り飛ばす場面は、『ろくでなしブルース』の、一発で相手を大きく吹き飛ばす場面から引いてきたものだ。

 

-オープニングと海、そしてエンディングなどでアナモフィックスレンズを使ったが。

▶レンズについては何も知らない。チョ・ヒョンレ監督がこういう場面はアナモフィックスレンズを使ったらいいだろうと言うので使ってみたんだが、すごく良かった。だがレンタル料があまりに高く、3回しか使えないということだった。仕方ないのでそうした。

 

-最初にキャスティングされたイム・シワンもオファーリストのトップではなく、ソル・ギョング(のキャスティング)も楽ではなかったが。

ソル・ギョング先輩を説得するときはまだコンテがなかった。言葉で説明するしかなかった。ありもしない自信をアピールした。初めて会ってお酒を飲んだが、「どうして(ありふれたような映画を)やろうとするんだ」と言う。なので、スタイルが違うはずだと答えた。そしたらソル先輩が「じゃあそのスタイルをどう信じろっていうんだ?」と。酒を飲みすぎてたんだろう、負けたくない気持ちになって「先輩も最近の映画の演技はイマイチだった」と言ってしまった。後で、一緒に行っていたPDが失敗したな、と言っていた。別れて家に帰る道すがら、先輩から「やりましょう」とメッセージが来た。

 

-それで、ソル・ギョングとは実際どうだったか。ぶつぶつ文句を言いながらも常に監督の求める通りにやる俳優だが。

▶現場でずっとやいのやいの言い合った。全羅道暴力団として出演するホ・ジュンホ先輩が「喧嘩はやめなさい」と諌めるほどだった。最初に全体リーディング(全員揃っての台本の読み合わせ)をしたんだが、不安だった。ソル・ギョング先輩は元々リーディングには力を込めない。イム・シワンとは個別に何度もリーディングをしたが、ソル・ギョング先輩がどんな風に演技するかが分からなくて不安だった。なので、一対一でリーディングをやりましょうと頼み込んだ。何度も頼み続けると「やめろ」「俺は個別リーディングをやったことがない」と言う。その後少し気にしたのか、夜に「個別リーディングやりましょう」とメッセージが来た。なので一生懸命準備した。ところがやらなかったんだ。酒でも飲みながらキャラクターについて話そう、と言う。心配が積もった。どう演技をするか、現場で初めて見ることになったので。初テイクで、刑務所でけらけらと笑う場面を撮った。とても良かった。それでいこうと伝えた。サーカスを見るように演技を見た。感情的なシーンを撮らなければならないのに、後ろでただトロット(韓国における演歌のような大衆楽曲)を歌っている。心の中で「何でこんなに不真面目なんだ」と思った。ところが、まるで化け物なんだ。カメラが回るとパッと変わる。待機室でコンテを見ているところに僕が入っていくとサッと隠す。そして「まぁ、一回読んだよ」と言う。そうでない素振りで本当に熱心に準備する。一方では、良い俳優である前に良い大人なんだなとも思った。イム・シワンと二人で感情的な演技を撮らなければならないとき、いつもイム・シワンが先に撮った。二人とも最初のテイクで良い演技を見せる俳優だが、ここはイム・シワンを先に撮るべきだと思った。ソル・ギョング先輩の方がベテランなので、リアクションを後から撮っても(感情を)引き出せるだろうと信じた。了承してくれるよう頼むと、「そうか」と快く受けてくれた。イム・シワンが刑務所で警察だと告白する場面も、イム・シワンのテイクから行ったが、声だけ聞こえるソル・ギョング先輩の演技に鳥肌が立った。早くソル・ギョングの演技をカメラに留めておきたいと思うほどだった。最初のやつをやってくれとずっと注文したので、後で「じゃ明日撮影するとかおれを先に撮るとかしろよ」と言われた。そう言いながらも、ずっとイム・シワンを先に撮るようにしてくれた。最後にイム・シワンと二人で撮った場面も「シワンが先に撮れよ」と。俳優は当然ながらどうしても自分の演技が一番優先になるものなのに、本当に尊敬した。

 

-イム・シワンはどうだったか。結果的に非常にうまかったが、普通こういう役はある程度体つきの良い俳優を使うものではないか。

見た目が美しくなければならないことは最初から決まっていた。イム・シワンが演じることになり、僕が考えていたアクションをかなり変えた。イム・シワンが刑務所で大柄の俳優を一発で殴り飛ばすというのは、どう考えても現実味がないだろうから。それでジャッキー・チェンのように、周囲にあるものを利用するアクションに変えた。イム・シワンは正確だ。元々のシナリオでは、イム・シワンがソル・ギョングにタメ口を使っていたんだ。だがイム・シワンがキャスティングされることになり、どうしても年の差があるので、(台詞を)尊敬語に変えた。イム・シワンがそれを見て、敬語とぞんざいな言葉遣いを混ぜてみますと言ったんだ。イム・シワンは最初はひどく重いイメージで準備してきた。なので序盤はまるで子供のようでいておいて、だんだん成長していくのだということを話した。実際に撮影に入ってからはイム・シワンに注文することは特になかった。泣きすぎたときにやりすぎだと抑えてやる程度だった。

 

-イム・シワンのキャラクターからは『クローズ』のいくつかのキャラクターが連想されたが。

▶特定のキャラクターを引用したわけではないが、自然に滲み出たんだと思う。元々イム・シワンに『クローズ』で主人公の坊屋が着ているスカジャンを着せるつもりだったんだ。ところが『インサイダーズ/内部者たち』を見たら、イ・ビョンホン先輩がその服を着ていた。同時にそのジャケットがイ・ビョンホンブランドとして流行してしまった。とても惜しかった。

 

-劇中イム・シワンは中に暗い色のTシャツを着て、反面ソル・ギョングは真っ白な服を着ている。だが中間からは、イム・シワンが自然とソル・ギョングと同じ色の服を着るようになる。

▶衣装チームの手柄だ。異なる色の二人だったが次第にイム・シワンがソル・ギョングに似ていくということを表現したかった。

 

-『不汗党』はソル・ギョングとイム・シワンのメロ映画だと話していたが。

僕は『狼 男たちの挽歌・最終章』をメロ映画だと思う。そういう感じが好きだ。虚勢に思えるかもしれないが、男たちの映画を作りながらそういう雰囲気を込めたかった。なのでソル・ギョング先輩には折に触れ、イム・シワンとメロを撮るんだと思って、恋する眼差しで彼を見てくれと話した。(ソル・ギョングは)「これはノワールだろ、何がメロだよ」と言いながらも、はっきりどういう意味か受け取ってくれた。イム・シワンに関しては、自分の感情がよく分からないままにしておくのが良いと思ったので、話しはしなかった。

 

-エレベーターシーンなど、クィア的な要素もあるが。

▶︎二人が海辺にいるシーンにもそういう意図があったし、エレベーターのシーンも、セクシーにやってくれと頼んだ。ソル・ギョングがイム・シワンの体を探るのを、性的な意味合いで、呼吸も荒くしてほしいと伝えた。元々はソル・ギョングのキャラクターを説明する台詞に「あいつは男色も女色もする」というのがあった。投資会社からあまりにその部分を強調するのは良くないだろうと言われて抜いた。ソル・ギョングがイム・シワンを初めて見たときから恋に落ちたのかもしれない、とも言える。

 

-それから、麻薬組織のボス(イ・ギョンヨン)の甥であるキム・ヒウォンとは三角関係ということだろうか。そのため、通常ヤクザ映画において裏切り役となる3番手のキャラクターと、キム・ヒウォンのキャラクター(の性質)が異なっている。

▶そうだ。キム・ヒウォン先輩は「なら自分は同性愛者だと考えて演じるよ」と言っていた。だからヒウォン先輩が最後に「お前、目に何かが憑いているんだ(字幕:惑わされてる)」と哀切に話すんだ。

 

-フラッシュバックが最近の韓国映画において一番よく使われていたように思うが。

▶︎元々のシナリオからそうだった。ソル・ギョング先輩が最初に「どういう意図で作ったのか」と聞いてきたので、「ただ書いた」と答えた。後々インタビューのときにもそんな風に答えてたらダメだというので、その場で「そうすることで、信じるタイミングが変わってゆくのが目に見えるようにした」という言葉を準備した。

 

-警察のチーム長であるチョン・ヘジンのキャラクターがとても良かった。通常こういう映画で、潜入捜査官を送り込む警察側のチーム長は男性が担いがちだが。最後の退場が残念でもあった。

▶残念な部分があるとすれば、すべて僕のせいだ。わざわざ女性にしようと思ってあのキャラクターを書いたわけではない。『新しき世界』ではチェ・ミンシク先輩がそういう役をやったが、元々のシナリオ草稿では、チーム長の役割は今よりも少なかった。チョン・へジン先輩に、最初は『生き残るための三つの取引』のファン・ジョンミンのようにやってほしいと話した。ところが最初の撮影をしながら、これはやばいと思った。(そのため今度は)冷たく、鋭くやってほしいと話した。そのせいでチョン・へジン先輩が苦労していた。あるときは怒りを爆発させてほしいと頼んで、「鋭くやれって言ったじゃない」と言われたりもした。「どうも 坊やたち(アンニョン イェドラ)」と言う場面でハイタッチをするのはチョン・へジン先輩のアドリブだった。本当に良かった。だが(チョン・ヘジンは)「自分が気持ちよかったからああやったけど、キャラクターと合わないと思うから抜いてほしい」と言う。なので、全体を通してみればキャラクターに合っているだろうと話した。

 

-エンディングにおけるアクションが相対的に少ない。だからこそチョン・へジンの退場も惜しいのだが…。

▶コンテにおいて一番議論になった部分だ。僕は、ソル・ギョングとイム・シワンの対話で始まり、アクションを経て対話で終わるので、アクションが強すぎると対話における感情的な要素が弱まってしまいそうだと考えた。現場でももっとアクションを入れようという意見が多かった。だが編集でもアクションを減らした。僕は今(の内容)で間違っていないと思うけど、残念に感じられたのなら僕の責任だ。正直、チョン・へジン先輩に対しては申し訳ないという気持ちも大きい。最後の場面でのチョン・へジン先輩の出演シーンも、たくさん編集で削られた。ソル・ギョングの視線で終わるので、どうしてもチョン・へジン先輩の分量を減らすほかなかった。(ジェホとヒョンスの)二人で終わらせたかった。三つ巴の戦いになるコンテも存在したが、二人で終わらせるべきだと思った。
最後の場面を撮るとき、ソル・ギョング先輩に「俺は自殺しに行くのか」と尋ねられた。だから「曖昧な状態だったらいい」と答えたら、正確に注文してくれと言う。悩んで「イム・シワンを信じたくて行く、ということでやってほしい」と伝えると、「オーケー」と答えてすぐに撮影に入った。

 

-このところのソル・ギョングの出演作において、瞳がこんなにセクシーに映ったことがあっただろうかと思ったが。

▶暗い場面でもソル・ギョングのアイライトは輝くようにした。

 

ソル・ギョングとイム・シワン、二人のバランスを取るのは容易ではなかったはずだが。

▶撮影前、周囲ではイム・シワンがソル・ギョングに押されてしまうだろうという声が多かった。現場では、イム・シワンにより集中した。そういう部分はソル・ギョング先輩も了解していた。なので二人のバランスを取ることは難しくはなかった。

 

-最後の晩餐をパロディしそれを再び反転させるなど、印象深いカットが多いが、だとすれば誰がユダなのか。そのシーンの光源も最後の晩餐に酷似していたが。

▶特に意図したというよりは、ただ、ソル・ギョングが刑務所のキリストのように見えればと思った。格好いいだろうと。現場でもユダの席に誰を座らせればいいかという声が出たが、そこにいる人物の中には裏切るキャラクターがいないじゃないか。ただ場面だけ同じにして撮った。光源などはすべて撮影監督の功績だ。

 

-刑務所のセットは米ドラマを連想させるが。

▶最初から美術監督に、米ドラマの刑務所のようにしてくれと頼んだ。ジョージ・クルーニーの『アウト・オブ・サイト』でのように、囚人たちが刑務所で自由に遊ぶ姿が欲しかった。美術監督がひどく面白がっておられた。元々は看守たちが(囚人たちを)2階から見守り、その足元から下に降りてくるというコンテも考えたが、お金がなくてできなかった。正直、お金がなくてフェンスもやっとだった。フェンスを担当する方に一番安い価格で手配してもらって、必要な部分だけを囲った。僕も一緒に一緒に設営した。現場では皆友人のような雰囲気だったので、僕が失敗したらスタッフたちに散々野次られた。

 

-刑務所で外出から帰ってきたイム・シワンにソル・ギョングと手下たちが近寄って一緒に歩くシーンは、明らかに参照元がありそうだが。

▶映画『預言者』のエンディングを思い浮かべながら撮った。

 

-全体のカラートーンはどのように設定したのか。

マーティン・スコセッシの映画を観ると、ニューヨークを描くにあたって象徴的な色感があるだろう。そういうのができればと思った。刑務所はブラウンで、最も明るくした。二人の関係が始まるところだから。そうしておいて、段々と濃いブラックに入っていくようにした。ロシアクラブはすべてレッドで。

 

-アクションが大きく三シーンだ。水産業者襲撃シーンとイ・ギョンヨン殺害シーン、そしてエンディング。イ・ギョンヨンを殺す場面は、ソル・ギョングが暗闇の中で煙草の火を点ける場面のためにああいう風にしたのか。

水産業者の場面はさっき話した通り、2人がクラブに遊びに行ったような雰囲気にしたかった。大柄の男は007シリーズのジョーズのキャラクターを借用した。二人がお互いに力を合わせて勝つようにしたかった。暗転の場面は、最初からシナリオに、ソル・ギョングが暗闇の中で火を点ける場面を入れていた。イ・ギョンヨン先輩は何故か出る映画でことごとく死ぬので、今回はさっぱり殺してくれて有難いと話していた。

 

-イ・ギョンヨンが貿易会社のホームショッピングのCMに出る場面が印象的だが。

▶こういう映画で警察のブリーフィング場面は全部同じじゃないか。粛々とプレゼンテーションをする、そういうのをやりたくなかった。そこで地域CMを使ったら面白そうだと思った。イ・ギョンヨン先輩がイム・シワンの前事務所の振り付けチームと一緒に練習をした。『マイPSパートナー』を一緒にやったイ・ミソ、シン・ソユル、キム・ボミが商品券と引き換えに手伝ってくれた。

 

-麻薬を塩に混ぜて海に隠すのも参照元がありそうだが。

マーク・ウォールバーグの出演作に出てくる場面だ。もう少し説明を入れようかとも思ったが、台詞だけで十分に感じた。

 

-音楽が明澄だったが。鳴るべきときに鳴り、上がるべきときに上がり。

音楽のこともよく分からないので、キム・ホンジプ音楽監督にバンドベースでやってくれとお願いした。『ピーキー・ブラインダーズ』というイギリスのドラマがあるんだが、その音楽を参考にしてくれと伝えた。

 

カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門に招待されたが。

知ったのは僕が一番後だったと思う。友人たちと週に一度マッコリとホンオ(ガンギエイを発酵させたもの)の会をやるんだけど、そこにソル・ギョング先輩から連絡がきたんだ。それで友達が(祝杯の)ウイスキーを開けようと言い、すぐに移動した。そのときはすべてが最高だったと思う。翌日ソル・ギョング先輩が家に招待してくれてまた酒を飲んだが、前の日に飲んだ酒も残っていたのでキツかった。

 

-『不汗党』というタイトルやソル・ギョングが演じたジェホ、そしてイム・シワンのヒョンス、それぞれどのように名付けたのか。

▶『不汗党』は、タイトルを決めずに書いている途中でひとまず仮題としてつけた。他のタイトルを考えようとしたが、ふさわしいものがなくこうなった。ジェホとヒョンスは友人の名前だ。『マイPSパートナー』でも友人の名前を使ったんだが、ヒョンスという友達が、次の映画には自分の名前を使ってくれと言った。ヒョンスと親しい友人の名前がジェホだ。

 

-一番好きなシーンは。

▶海辺のシーンも好きだが、やはり最後の場面だ。エンディングでイム・シワンが車から空を見る表情も良いし。最初にソル・ギョングが車から空を見る場面と意図的に交差させたが、本当に良かった。

 

-次の作品は。

▶70年代の大統領選挙に関して描いたシナリオがある。朴正熙元大統領と金大中元大統領が争った選挙だ。DJ(金大中)の参謀たちが主人公だ。地域感情がどのように作られたか、進歩派といえどクリーンなわけではない、そういう話をしたい。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

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【예매권 정보】※韓国不汗党員向け情報記事

신주쿠 무사시노관과 시네리부루 우메다에서는 예매권(“특별 감상권”)이 판매되고 있습니다.

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종이로 만든 티켓 + 미니 스티커...^^

판매 기간 : 불한당 개봉 전날까지
               (신주쿠 무사시노관은 5/4까지, 시네리부루 우메다는 5/25까지)

판매처 : 각 극장 매점

사용 가능 극장 : 구매 극장에서만 사용 가능

사용 가능 기간 : 각 극장 상영 기간중

가격 : 1500엔

부속 : 스티커

사용방법 : 불한당 감상 당일 극장 티켓부스에서 좌석 지정권과 교환

 

!! 예매권만으로는 극장에 들어갈 수 없습니다 !!

예매권은 특정 작품을 일반 감상요금(보통 1800엔...꽤 비쌈)보다 좀 싸게 볼 수 있게 개봉 전에 판매하는 것입니다.

감상 당일에 미리 사 놓은 예매권을 들고 다시 극장에 가서, 티켓 부스에서 그 작품의 상영 시간와 좌석을 선택하여 돈 대신에 예매권을 내면 스태프분이 좌석 지정권과 교환해 주십니다(예매권의 디자인 부분은 뜯어서 줍니다).

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※그 둘 극장은 3일후 상영회까지 티켓(좌석 지정권)을 구할 수 있습니다.

그래서 예를 들어 5/4에 도쿄에 도착하시는 분은 그날에 무사시노관에 가서 예매권을 구입하시고 나서 바로 예매권을 사용해서 티켓 부스에서 5/5 원하시는 시간대의 불한당 좌석 지정권과 교환하실 수 있습니다.

 

예매권을 사실 땐 원래는 제목을 말하는데 일본판 불한당 제목(‘나모나키 노랑이누노 론도’)이 너무 길어서(ㅠㅠㅠ) 그냥 손가락으로 가리키며 “코레 쿠다사이(これください/이거 주세요)”라고 하시면 됩니다~^^

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이렇게 판매되고 있음~ (시네리부루 우메다에서 촬영)

 

P.S.극장 로비에는 팸플릿도 있어서 찾아 봐 주세요! 


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【불한당 일본 상영관 정보】※韓国不汗党員向け情報記事

안녕하세요. 불한당 일본 개봉을 응원하는 계정을 운영중인 일본 당원입니다.
지난 9일에 한국 불한당원분들에게  불한당을 보러 일본으로 오실 계획이 있으신지를 묻었는데, 그 결과 대답해 주신 728명중 53%,약 385명 이상이 계획이 있다고 응답하셨습니다.

대박...!! (대답해 주신 분들 정말 감사합니다!)

상영관에대한 정보를 찾으시는 분도 많을 거라는 생각으로  아래에 불한당을 상영 예정인 일본 국내 극장 정보들을 모아 봤습니다.

제 서투른 한국어에 대해선 미리 양해 부탁드립니다ㅠㅠ 최선을 다해서...노력...하고...있...습니다....!!!

 

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상영관 리스트

※2018/4/14확인 

[도쿄/신주쿠]

극장:신주구 무사시노관 新宿武蔵野館

개봉 예정: 5월 5일

극장 홈페이지:http://shinjuku.musashino-k.jp/

스케줄 게재 페이지:http://www1.musashino-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php

주소:3F, Musasino Bld., 3-27-10, Shinjuku, Shinjuku-ku, Tokyo https://goo.gl/maps/fLJJqxaYapy

 

[오사카/우메다]

극장:시네 리부루 우메다 シネ・リーブル梅田

개봉 예정:5월 26일

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:https://ttcg.jp/cinelibre_umeda/

주소:3~4F, Umeda Sky Bld.,1-1-88 Oyodonaka, Kita-ku, Osaka https://goo.gl/maps/VVmgfbqewPL2


[홋카이도/삿포로]

극장:디노스 시네마즈 삿포로 극장 ディノスシネマズ札幌劇場 

개봉 예정:6월 5일(미확정)

극장 홈페이지:http://cinema.sugai-dinos.jp/pc/sapporo/

스케줄 게재 페이지:http://www.dinoscinemas-reserve.jp/sapporo/schedule/

주소:7~8F, Dinos Sapporo Tyuou Bld., 1-8, Minami3-jonishi, Chuo-ku Sapporo-shi, Hokkaido https://goo.gl/maps/UBDsVgeNvJn

 

[미야기현/센다이]
극장:포람 센다이 フォーラム仙台

개봉 예정:5월 18일

극장 홈페이지:http://forum-movie.net/sendai

스케줄 게재 페이지:http://forum-movie.net/sendai/#schedule-top

주소:2-1-33, Kimachidori, Aoba-ku Sendai-shi, Miyagi https://goo.gl/maps/XTLT57r1Lb72


[가나가와현/오다와라]

극장:오다와라 코로나 시네마월드 小田原コロナシネマワールド 

개봉 예정:5월 5일

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:http://www.korona.co.jp/Cinema/odw/top.asp

주소:219-4, Maekawa, Odawara-shi, Kanagawa https://goo.gl/maps/ofEWGUnMeX32

 

[군마현/다카사키]

극장:시네마테크 다카사키 シネマテークたかさき

개봉 예정:미정(6~7월?)

극장 홈페이지:http://takasaki-cc.jp/

스케줄 게재 페이지:http://takasaki-cc.jp/category/films/

주소:202, Aramachi, Takasaki-shi, Gumma https://goo.gl/maps/mWR5Tt6qafp

 

[아이치현/나고야]

극장:센츄리 시네마 センチュリーシネマ

개봉 예정:미정(6월?)

극장 홈페이지:http://www.eigaya.com/theater/century/

스케줄 게재 페이지:http://www.eigaya.com/schedule/2week/

주소:8F, Nagoya PARCO EAST, 3-29-1, Sakae, Naka-ku Nagoya-shi, Aichi https://goo.gl/maps/VJ7V2aaymtA2

 

[아이치현/나고야]

극장:나카가와 코로나 시네마월드 中川コロナシネマワールド

개봉 예정:5월 26일

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:http://www.korona.co.jp/Cinema/nak/top.asp

주소:3-110, Ematsu, Nakagawa-ku Nagoya-shi, Aichi https://goo.gl/maps/LNY27gUTUPP2

 

[아이치현/한다]

극장:한다 코로나 시네마월드 半田コロナシネマワールド

개봉 예정:미정

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:http://www.korona.co.jp/Cinema/han/top.asp

주소:3-11-1, Asahimachi, Handa-shi, Aichi https://goo.gl/maps/mWusbH66dnT2

 

[기후현/오오가키]

극장:오오가키 코로나 시네마월드 大垣コロナシネマワールド

개봉 예정:5월 5일

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:http://www.korona.co.jp/Cinema/ogk/top.asp

주소:Azanisinuma 523-1, Mitsuzukacho, Ogaki-shi, Gifu https://goo.gl/maps/voK7zULCyPk

 

[후쿠이현/후쿠이]

극장:후쿠이 코로나 시네마월드 福井コロナシネマワールド

개봉 예정:5월 5일

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:http://www.korona.co.jp/Cinema/fuk/top.asp

주소:2-1201, Owada, Fukui-shi, Fukui https://goo.gl/maps/iynTP9o5zyx


[효고현/고베]

극장:모토미치 영화관 元町映画館

개봉 예정:6월 30일

극장 홈페이지:http://www.motoei.com/

스케줄 게재 페이지:http://www.motoei.com/schedule.html

주소:4-1-12, Motomachidori, Chuo-ku Kobe-shi, Hyogo https://goo.gl/maps/44RdFprhyDx

 

[교토후/가츠라강]
극장:이온시네마 교토 가츠라강 イオンシネマ京都桂川

개봉 예정:미정

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:https://cinema.aeoncinema.com/wm/katsuragawa/

주소:3F, Aeon Mall Kyoto Katsuragawa, 376-1, Kuze Takadacho, Minami-ku Kyoto-shi, Kyoto https://goo.gl/maps/wBQgCe8XnbN2

 

[후쿠오카현/후쿠오카]
극장:KBC시네마 KBCシネマ

개봉 예정:미정(여름?)

극장 홈페이지:http://kbc-cinema.com

스케줄 게재 페이지:http://kbc-cinema.com

주소:1-3-21, Nanotsu, Chuo-ku Fukuoka-shi, Fukuoka https://goo.gl/maps/vxx8r7sPcuF2

 

[사가현/사가]

극장:109시네마즈 사가

개봉 예정:7월 6일

극장 홈페이지/스케줄 게재 페이지:http://109cinemas.net/saga/

주소: Moraju Saga, 717, Kosemachi Ushijima, Saga-shi, Saga https://goo.gl/maps/7r2FsH3dyDH2

 

[오키나와현/나하]

극장:사쿠라자카 극장 桜坂劇場

개봉 예정:6월 2일

극장 홈페이지:http://sakura-zaka.com/

스케줄 게재 페이지:http://sakura-zaka.com/program

주소:3-6-10, Makishi, Naha-shi, Okinawa https://goo.gl/maps/T56vb76TFd32

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예매권이나 당일권 구매 방법에 대해서도 쓰려는데... 시간 관계상 오늘은 여기까지ㅠㅠ

담주에 추가하겠습니다...!

 

@TheMercilessJPF

【ビョン・ソンヒョン監督インタビュー】cine21 No.1105

ビョン・ソンヒョン監督インタビュー

出典:cine21 No.1105 2017/5/16

原文:

 

※本文中、ネタバレ部分は翻訳の掲載を省略しています。

※今回の翻訳掲載分に作品内容や展開に関するネタバレはないですが、本作に関していかなる先入観も持ちたくない場合は、作品鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

 

 

 

ノワールの皮をかぶったメロ映画を作りたかった」

 

図体が自身の三倍にもなる相手の頬を少しもひるむことなく張り倒す『不汗党:悪い奴らの世界』の「革新的なトライ(頭のネジが飛んでるヤツ)」ヒョンス(イム・シワン)のように、ビョン・ソンヒョン監督は20代のうちからひるむことなく映画と言う世界とタイマンで闘った。20代の青年として語りたかったことを初映画『青春とビート、そして秘密のビデオ』(2010)に込め、テレフォンセックスを題材とした映画『マイPSパートナー』(2012)で挑発し、新たなジャンル的渇望からノワール映画『不汗党』を作った。(ネタバレにつき中略)ノワール映画でありながらメロ映画の感情の流れに沿うこの映画は、手慣れた素振りで新たな試みを続けてみせる。その試みの賜物か、『不汗党』は今年(2017年)カンヌ国際映画祭ミッドナイトスクリーニング部門に招待された。カンヌに発つ前に、ビョン・ソンヒョン監督に会った。


―『不汗党』がカンヌ国際映画祭ミッドナイトスクリーニング部門に招待された。カンヌでの上映を予想したか。

まったく。映画祭に行こうと思って作った映画ではなく、商業映画として作ったので、予想はしていなかった。映画社からカンヌに出品すると言われたときもただ「そうですか」と答えた(笑)。招請の知らせを聞いた日は酒もそれなりに飲んだけど、今は落ち着いた気持ちだ。仕事をしていれば良いことも悪いことも起こるものだが、その中でただ、とても嬉しいことがひとつ起きたんだと思う。今後も映画祭が好むような映画を作ろうという気はない。

 

―デビュー作『青春とビート、そして秘密のビデオ』はヒップホップを題材とした青春映画、『マイPSパートナー』はテレフォンセックスを題材にしたロマンティックコメディだった。三番目の映画『不汗党』は前出の作品とジャンル的にかなり違う位置にある映画だ。二編の映画を撮った後、どのような映画的渇望、欲求があったのか。

『青春とビート』のときから持っていた目標が、それぞれジャンルの異なる長編映画を5本撮る、ということだった。監督は俳優や他のパートのスタッフに比べて、関われる映画が多くない。それなら多様なジャンルを試してみたかった。『マイPSパートナー』を撮っていた頃から『不汗党』を構想していたが、当時撮影現場でもずっとそういう話をしていた。次の映画は絶対に男たちの映画を撮ると。

 

―何故男の映画だったのか。

『マイPSパートナー』のとき、ふわっとした感情シーンを撮りながら何がOKで何がNGか自分で分からないことがあった。なので、ずっとスクリプターの女性に聞いていた。「これ可愛らしいと思う?俺はちょっと気持ち悪い気がするんだけど、どう?」。ふんわりしている感情シーンに関して確信を持てないので、次は僕が観客として楽しんできたジャンル、今とは反対の地点にある映画をやりたいという気持ちが生まれた。

 

―この映画の出発点は。

まず、ジャンル的にアプローチして作った映画は『不汗党』が初めてだ。外皮はノワールだが、(中身は)メロの感情を持って進んでいく映画であればと思った。(中略)二人の登場人物の関係の話としてアプローチしていく映画のスタイルについて、スタッフと一緒に長い間頭を悩ませた。

 

―(中略)ジャンル的に(先行作品が多いため)身動きできる幅が狭くならざるを得ない状況で、勝機をどこに得ようとしたか。

もちろんジャンルの慣習を避け通ることはできない。それができるほどの天才ならよかったけど、そうではないので。なので、スタイルを差別点としよう、今まで韓国映画で見られなかったルックを作ってみようと思った。コンテ作業に特に力を注いだ。プリプロダクションの期間が三ヶ月だったが、その間ほぼずっとコンテ作業だけにかかりきりになっていたと思う。シナリオを書きながら、ノワール映画でなくメロ映画を見続けた。作品数としてはノワールのほうが多いけれど、繰り返し観たのはメロだった。『Love Letter』(1995)『ジョゼと虎と魚たち』(2002)『8月のクリスマス』(1998)などの映画をかけっぱなしにしながらシナリオを書いた。メロの感情に酔い続けていようと。

 

―それは役に立ったか。

役立ったと思う。その映画から何かを参考にしようというのではなく、メロの感情を留めておくことが重要だった。二人の人物の感情をずっと考えていなければならなかったから。個人的には、ジェホのヒョンスに対する感情はあるかたちの愛だと考えた。

 

―先程の話のように、映画は裏切りではなく友情を語ることを選択する。「人を信じるな、状況を信じろ」「俺が誰を信じられると思う?」という台詞が繰り返されるが、結局それは、信頼についてを浮かび上がらせるためだったのではないかと感じる。

(中略)疑いと裏切りによって広がっていく緊張感をもっと取り入れなくてはならないのでは、という話もあった。だけどそれでは他の映画と変わらないだろう。(映画の中で)話の時系列を入れ替えているが、そうやって過去と現在を交差させたのも、関係性のタイミング、信頼のタイミングについて語りたかったためだ。生きていればそういうのがあるだろう、タイミングさえよければうまくいった関係みたいなもの。仕事も恋愛も、タイミングが合わずにねじれ、すれ違うことが多い。罪悪感もそういうところからはじまる感情だと思った。先に話した通り、外皮はノワールだが、シナリオを書くときは恋愛ものと思って書いたので、映画を観てそういう感情が感じられたら、僕としては成功だと思う。


-コンテ作業の中で新しいルックについて欲があったということだったが、美術や撮影など、ありきたりな画を避けようという努力の痕が其処此処に見られた。1シーン1シーンごと、シーン自体の完成度にも非常に神経を使ったようだった。

シーンの完成度が高く見えたのなら、それはマスターショット撮影(編集を考慮し同一の場面をサイズやアングルを変えて撮影すること)をやらなかったためだ。序盤にはむしろ俳優たちが、これしか撮らなくていいのかと心配するほどだった。現場では、自分が考えた通りにしか編集しようがないように撮る。スムーズに進んでいたらコンテの通りに撮るタイプだ。現場での即興性はあまり追求しない。そうやってシーンの密度を上げるようにし、俳優たちも次第に僕のやり方を好むようになっていった。無駄なエネルギーの消耗を減らせるし、集中もできるから。

 

―刑務所内の大男とのビンタの張り合いも、アメリカのドラマで見るような絵面であって韓国の刑務所を考えたとき簡単に思い浮かぶものではなかった。

ハン・アルム美術監督との初ミーティングのとき、これは現実に則った映画じゃないとお伝えした。リアリティを追求する映画ではないと。すでにオープニングから銃が登場するじゃないか。(中略)だから、(オープニングの)以降に少し思い切った表現をしても大丈夫だろうと思った。それで刑務所も、韓国では見られないスタイルの刑務所を作ってくれと話した。鉄格子とベッドのある監獄でもいいと。韓国の状況や実情に合わせずに、少し異国的な雰囲気を出していこうと。

 

―アクションシーンで一番力を入れたのは後半で起こるチェ船長の事務室での乱闘劇だろうと感じたが、(同シーンから)パク・チャヌクの『オールドボーイ』(2003)の金槌シーンも連想された。

まず、漫画的なのが良さそうだと思った。例えばソル・ギョング先輩が男を一発殴ったとき、その人がぐるりと一回転するようなアクション。ところが、ホ・ミョンヘン武術監督と初めて会ったときにその話をしたら溜め息をつかれた(笑)。あまりに漫画的すぎじゃないかと。僕が既存のものとは違う方式で撮りたがっていることを掴んでからは、ホ・ミョンヘン武術監督もアクションの和より映画の呼吸をより重視しながら作業してくださった。チェ船長の事務室のアクションシーンもそうやって生まれた。チェ・ヒョンレ撮影監督とはこういう話をした、カメラを水平方向にのみ動かすと『オールドボーイ』への言及が出てきそうだから、カメラを一回転させてみようと。そしたら撮影監督が言うには「何でそこでカメラを回すんです?」。アングルでもカメラワークでも意図をとても大事に考えるひとなので「何となく」がない(笑)。ちなみに、パク・チャヌク監督の『オールドボーイ』はあまりにクラシックで、非常に優れたアクションシーンなので、もしあの場面を見て『オールドボーイ』が連想されたとしても別に構いはしない。あのシーンはただ、アクションが楽しそうに見えたらいい。

 

―漫画的なスタイルとノワール映画の感情が衝突するのではという憂慮はなかったか。

周囲の人は心配していたが、僕は心配しなかった。むしろぶつかり合うのが面白そうだと思った。正直ありきたりな話やジャンルであり得るから、そうやって少しずつでもひねりを加えることで、観客も「考えながら撮ったんだな」と思えるんじゃないか。たくさん悩みながら、誠意を込めて撮った映画として観てくださったら嬉しい。

 

―キャスティングもやはり、予想の外にあった。イム・シワンはこれまで、男性的な魅力やアクション俳優としてのイメージを見せたことのなかった役者だ。

だからキャスティングした。これまで見せたことのない姿を見せることができるから。それに根本的に演技が上手く、真情性を感じさせる俳優だ。彼が泣くと、泣く演技が上手いんだなというのではなく胸にぐっとくるものがある。最初から重々しく男性的な姿を見せると固く映るかもしれないと思ったが、徐々にキャラクターが変化する姿を見せれば、観客も十分に受け入れるだろうと考えた。それから、顔がすごく良かった。撮りながら「人はどうしたらこんなにイケメンになれるんだろう」と思った。ソル・ギョング先輩もとても良い顔をされているが、意外と「イケてる」キャラクターを演じてはいなかった。十分にジャンル的に格好良い顔だ。

 

―年齢差のある先輩、後輩と仕事するにあたり、それなりのコミュニケーション技術も必要だったと思うが。

自分のディレクションがどういうスタイルか、自分ではよく分からない。ソル先輩は淡白で正確なので良いと言ってくださりはしたが、実は演技指導するとき少し怖気付いた。僕の考えと俳優の考えが違ったらどうしようと。ところがソル先輩は、口では僕の要求を聞かないようなことを言いながら、撮影に入るとディレクションした通りに演技する。多分、監督のディレクションを最も正確に守る俳優ではないかと思う。台詞の助詞ひとつ違えることなく、シナリオの三点リーダまで全て忠実に演技する。少し驚いたので、酒の席でそこまで忠実にやらなくてもいいと、気楽に演じていいと言ったら「監督は僕よりたくさん考えてきただろう、監督の意図の通りにやらないと」とおっしゃった。

 

―撮影中、酒もよく飲んだか。

70回に満たなかっただろう撮影中に、80回は飲んだと思う(笑)。俳優陣はダイエットもしなければならず体も作る必要があったのであまり多くは飲めず、主にスタッフたちと集まった。たまに無理して飲んだ日は、僕はソル先輩を言い訳にしソル先輩は監督が責任を負うものだと言って。そのせいで現場でのあだ名が「ソル・クネ」と「ビョン・スンシル」だった(笑)。もちろん、気楽で親しい関係なのでそんな冗談も言える。権威的なものとは無縁の現場だった。今回の現場は少し特別だった。『マイPSパートナー』を撮っていたときは、酒は一度も飲まなかった。

 

―次期作として書いたシナリオがあるということだが。

1960〜70年代を背景とした政治劇だ。最近政治ものが多く作られているので、似ているという話が出るかもしれないが、やはりどう違いを出せるかが要になりそうだ。メロ映画をやってみたいという気持ちもある。『不汗党』も一種のメロと考えて作ったが、しっかりとしたメロ、最近は目にしなくなってしまった伝統的なメロも撮りたい。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

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