映画『名もなき野良犬の輪舞』応援記事置き場

2018年5月公開の映画『名もなき野良犬の輪舞 (原題:不汗党) 』応援用ブログです。翻訳は素人です。

【ビョン・ソンヒョン監督インタビュー】スターニュース 2017/5/16記事

ビョン・ソンヒョン監督インタビュー

出典:スターニュース 2017/5/16

原文:

本記事は全体にネタバレを含みます!ご鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

 

 

 

ビョン・ソンヒョン監督が伝える『不汗党』A to Z

 

ビョン・ソンヒョン監督(38)。ソウル芸大の映画科を卒業し、公募展の賞金を狙って書いた『マイPSパートナー』がいきなり映画として製作されることになり、商業映画監督としてデビューした。 幸運だった。 その幸運に足を引っ張られた。演出のオファーにはロマンチックコメディ作品ばかりが溢れ、他のジャンルの映画をやろうにも『マイPSパートナー』の監督であるという点からなかなか受け入れられなかった。
(2017年5月)17日に封切られる『不汗党』は、そのため困難を極めた。シナリオを書いている段階から周囲に止められた。製作も、投資も、キャスティングも、ある一つ簡単にはいかなかった。そんな苦労の末に作られた『不汗党』は、いきなり第70回カンヌ国際映画祭に招待された。幸運だ。ビョン・ソンヒョン監督にとって幸運は出し抜けに訪れるが、その幸運はまた、新たな挑戦の始まりでもあった。『不汗党』に訪れた幸運は彼にどんな結果をもたらすであろうか。すでに今年観るべき韓国ノワールとして名を挙げられる『不汗党』について、項目ごとに尋ねた。

-『マイPSパートナー(2012)』後、『不汗党』の発表まで楽な道のりではなかったが。

▶公募展用に賞金を狙って『マイPSパートナー』を書いた。当時低予算の長編映画を準備していたが、『マイPSパートナー』の演出提案をもらった。こんな機会はめったにないと周りに背中を押された。だがロマンチックコメディーでデビューしてみたら、カラーの異なる映画をやるのが難しくなった。本当に長い期間待機した。その間、ロマンチックコメディーとヒューマンコメディーの提案を多くもらっていた。なので『不汗党』を書いてみたいと話したとき、周囲にも反対する声が多かった。

 

-『不汗党』は潜入捜査官として刑務所に潜入した刑事が、そこで麻薬組織のナンバー2と出会うことで起こる出来事を描いた映画だ。 こういうジャンルは参考となり得る作品がかなり多いが。

▶潜入捜査官の話は『新しき世界』を観て勇気をもらった。韓国でもこういう話を映画で作っていいんだ、という考えを持つようになった。だが周りからは、『新しき世界』のまがい物と言われるだろうと反対を受けた。だけどそのまま書いた。そして『マイPSパートナー』で組んだプロデューサーと一緒に、投資者を説得しようと歩き回った。簡単なことではなかった。「こんなのをやれる監督か?」そういう反応が多かった。 

 

-『不汗党』はかなりスタイリッシュだ。撮影は『4等』のチョ・ヒョンレ撮影監督、美術は主に時代劇をやってきたハン・アルム美術監督。これはビョン・ソンヒョン監督が『不汗党』のコンテについて、(美術面での)明確な理解があることの表れだろうが。

▶『不汗党』はとてもありふれたジャンルであり、話だ。なので次の二つの点を強調した。まずはスタイルが命だ。そしてこういう潜入捜査ジャンルでは、潜入した刑事が常にアイデンティティを巡って苦悩するだろう。自分は刑事か、犯罪者か。『不汗党』ではそれらをすべて省いて始めようと思った。
プリプロダクションの3ヵ月間、ずっとコンテ作業を行った。撮影監督とコンテを練り、合間合間に美術チームも参加した。 僕が撮影と美術について全く知らないので、「これできます?」と尋ねながら、大学のサークル活動みたいにみっちりと討論しあった。チョ・ヒョンレ撮影監督は『4等』で見られる通り、クラシックな撮影をする方だ。なので僕があまりに行きすぎると抑えてくれた。実際の撮影現場では、撮影監督のほうがより多くアイデアを出したりもした。

 

-カメラの構図が漫画のコマ割りのようなものがかなり多い。ソル・ギョングが刑務所長と会う場面などは、コマの外から中をのぞき見るような構図だが。

▶元々漫画が好きだ。観客が『不汗党』を漫画を読むように観たらいいと思った。そういう距離の置き方をしたため、『不汗党』にはマスターショットがあまりない。なので早く撮れもした。リアクションショットがあまりないので。一方では、そうやって撮ってこそ100%自分の意図した通りに編集できるだろうとも考えた。ソースがなければ編集で何かを付け足しようもないから。『マイPSパートナー』のときはどうにも自分の意図とは異なるものが編集で付け加えられたりしたので。だがそれでもなお、編集で異なるバージョンが出たりもした。
クローズアップもできるだけ控えた。表情を見たくとも、見せずに想像させるやり方が好きだ。俳優があまり「僕は今悲しいです、僕は今嬉しいです」と見せすぎてしまわないことを望んだ。人物がどう動くかをより見せたかった。もちろんソル・ギョング先輩の演技を見ていると、自分でも気づかないうちにこれは見せないと、と思う場面がいくつも出てきたりもした。だがそうやって増やしてしまったため、後になって、元の計算通りにやればよかったという気持ちになった。

 

-漫画を連想させる場面がいくつかある。偽造文書を作る水産業者を襲う場面だとか。

▶『スラムダンク』や『クローズ』のような漫画が好きだ。武術監督に、水産業者襲撃の場面は『ろくでなしブルース』の一場面を持ち出して、こんな風に作ってくださいと伝えた。主人公たちが大阪で相手高校と取っ組み合う場面だ。ホ・ミョンヘン武術監督は『アシュラ』をやった方で、『不汗党』でも『新しき世界』のエレベーターシーンのようなアクションを考えてらしたようだ。なのであまりに浮いてるんじゃないかとおっしゃるので、「このアクションシークエンスは、ソル・ギョングとイム・シワンがまるでクラブに遊びにでも来たような雰囲気」でやってくれとお願いした。ソル・ギョングが「ダーリン、俺が来たぜ(字幕:ベイビー お待たせ)」と言いながら一発で敵を殴り飛ばす場面は、『ろくでなしブルース』の、一発で相手を大きく吹き飛ばす場面から引いてきたものだ。

 

-オープニングと海、そしてエンディングなどでアナモフィックスレンズを使ったが。

▶レンズについては何も知らない。チョ・ヒョンレ監督がこういう場面はアナモフィックスレンズを使ったらいいだろうと言うので使ってみたんだが、すごく良かった。だがレンタル料があまりに高く、3回しか使えないということだった。仕方ないのでそうした。

 

-最初にキャスティングされたイム・シワンもオファーリストのトップではなく、ソル・ギョング(のキャスティング)も楽ではなかったが。

ソル・ギョング先輩を説得するときはまだコンテがなかった。言葉で説明するしかなかった。ありもしない自信をアピールした。初めて会ってお酒を飲んだが、「どうして(ありふれたような映画を)やろうとするんだ」と言う。なので、スタイルが違うはずだと答えた。そしたらソル先輩が「じゃあそのスタイルをどう信じろっていうんだ?」と。酒を飲みすぎてたんだろう、負けたくない気持ちになって「先輩も最近の映画の演技はイマイチだった」と言ってしまった。後で、一緒に行っていたPDが失敗したな、と言っていた。別れて家に帰る道すがら、先輩から「やりましょう」とメッセージが来た。

 

-それで、ソル・ギョングとは実際どうだったか。ぶつぶつ文句を言いながらも常に監督の求める通りにやる俳優だが。

▶現場でずっとやいのやいの言い合った。全羅道暴力団として出演するホ・ジュンホ先輩が「喧嘩はやめなさい」と諌めるほどだった。最初に全体リーディング(全員揃っての台本の読み合わせ)をしたんだが、不安だった。ソル・ギョング先輩は元々リーディングには力を込めない。イム・シワンとは個別に何度もリーディングをしたが、ソル・ギョング先輩がどんな風に演技するかが分からなくて不安だった。なので、一対一でリーディングをやりましょうと頼み込んだ。何度も頼み続けると「やめろ」「俺は個別リーディングをやったことがない」と言う。その後少し気にしたのか、夜に「個別リーディングやりましょう」とメッセージが来た。なので一生懸命準備した。ところがやらなかったんだ。酒でも飲みながらキャラクターについて話そう、と言う。心配が積もった。どう演技をするか、現場で初めて見ることになったので。初テイクで、刑務所でけらけらと笑う場面を撮った。とても良かった。それでいこうと伝えた。サーカスを見るように演技を見た。感情的なシーンを撮らなければならないのに、後ろでただトロット(韓国における演歌のような大衆楽曲)を歌っている。心の中で「何でこんなに不真面目なんだ」と思った。ところが、まるで化け物なんだ。カメラが回るとパッと変わる。待機室でコンテを見ているところに僕が入っていくとサッと隠す。そして「まぁ、一回読んだよ」と言う。そうでない素振りで本当に熱心に準備する。一方では、良い俳優である前に良い大人なんだなとも思った。イム・シワンと二人で感情的な演技を撮らなければならないとき、いつもイム・シワンが先に撮った。二人とも最初のテイクで良い演技を見せる俳優だが、ここはイム・シワンを先に撮るべきだと思った。ソル・ギョング先輩の方がベテランなので、リアクションを後から撮っても(感情を)引き出せるだろうと信じた。了承してくれるよう頼むと、「そうか」と快く受けてくれた。イム・シワンが刑務所で警察だと告白する場面も、イム・シワンのテイクから行ったが、声だけ聞こえるソル・ギョング先輩の演技に鳥肌が立った。早くソル・ギョングの演技をカメラに留めておきたいと思うほどだった。最初のやつをやってくれとずっと注文したので、後で「じゃ明日撮影するとかおれを先に撮るとかしろよ」と言われた。そう言いながらも、ずっとイム・シワンを先に撮るようにしてくれた。最後にイム・シワンと二人で撮った場面も「シワンが先に撮れよ」と。俳優は当然ながらどうしても自分の演技が一番優先になるものなのに、本当に尊敬した。

 

-イム・シワンはどうだったか。結果的に非常にうまかったが、普通こういう役はある程度体つきの良い俳優を使うものではないか。

見た目が美しくなければならないことは最初から決まっていた。イム・シワンが演じることになり、僕が考えていたアクションをかなり変えた。イム・シワンが刑務所で大柄の俳優を一発で殴り飛ばすというのは、どう考えても現実味がないだろうから。それでジャッキー・チェンのように、周囲にあるものを利用するアクションに変えた。イム・シワンは正確だ。元々のシナリオでは、イム・シワンがソル・ギョングにタメ口を使っていたんだ。だがイム・シワンがキャスティングされることになり、どうしても年の差があるので、(台詞を)尊敬語に変えた。イム・シワンがそれを見て、敬語とぞんざいな言葉遣いを混ぜてみますと言ったんだ。イム・シワンは最初はひどく重いイメージで準備してきた。なので序盤はまるで子供のようでいておいて、だんだん成長していくのだということを話した。実際に撮影に入ってからはイム・シワンに注文することは特になかった。泣きすぎたときにやりすぎだと抑えてやる程度だった。

 

-イム・シワンのキャラクターからは『クローズ』のいくつかのキャラクターが連想されたが。

▶特定のキャラクターを引用したわけではないが、自然に滲み出たんだと思う。元々イム・シワンに『クローズ』で主人公の坊屋が着ているスカジャンを着せるつもりだったんだ。ところが『インサイダーズ/内部者たち』を見たら、イ・ビョンホン先輩がその服を着ていた。同時にそのジャケットがイ・ビョンホンブランドとして流行してしまった。とても惜しかった。

 

-劇中イム・シワンは中に暗い色のTシャツを着て、反面ソル・ギョングは真っ白な服を着ている。だが中間からは、イム・シワンが自然とソル・ギョングと同じ色の服を着るようになる。

▶衣装チームの手柄だ。異なる色の二人だったが次第にイム・シワンがソル・ギョングに似ていくということを表現したかった。

 

-『不汗党』はソル・ギョングとイム・シワンのメロ映画だと話していたが。

僕は『狼 男たちの挽歌・最終章』をメロ映画だと思う。そういう感じが好きだ。虚勢に思えるかもしれないが、男たちの映画を作りながらそういう雰囲気を込めたかった。なのでソル・ギョング先輩には折に触れ、イム・シワンとメロを撮るんだと思って、恋する眼差しで彼を見てくれと話した。(ソル・ギョングは)「これはノワールだろ、何がメロだよ」と言いながらも、はっきりどういう意味か受け取ってくれた。イム・シワンに関しては、自分の感情がよく分からないままにしておくのが良いと思ったので、話しはしなかった。

 

-エレベーターシーンなど、クィア的な要素もあるが。

▶︎二人が海辺にいるシーンにもそういう意図があったし、エレベーターのシーンも、セクシーにやってくれと頼んだ。ソル・ギョングがイム・シワンの体を探るのを、性的な意味合いで、呼吸も荒くしてほしいと伝えた。元々はソル・ギョングのキャラクターを説明する台詞に「あいつは男色も女色もする」というのがあった。投資会社からあまりにその部分を強調するのは良くないだろうと言われて抜いた。ソル・ギョングがイム・シワンを初めて見たときから恋に落ちたのかもしれない、とも言える。

 

-それから、麻薬組織のボス(イ・ギョンヨン)の甥であるキム・ヒウォンとは三角関係ということだろうか。そのため、通常ヤクザ映画において裏切り役となる3番手のキャラクターと、キム・ヒウォンのキャラクター(の性質)が異なっている。

▶そうだ。キム・ヒウォン先輩は「なら自分は同性愛者だと考えて演じるよ」と言っていた。だからヒウォン先輩が最後に「お前、目に何かが憑いているんだ(字幕:惑わされてる)」と哀切に話すんだ。

 

-フラッシュバックが最近の韓国映画において一番よく使われていたように思うが。

▶︎元々のシナリオからそうだった。ソル・ギョング先輩が最初に「どういう意図で作ったのか」と聞いてきたので、「ただ書いた」と答えた。後々インタビューのときにもそんな風に答えてたらダメだというので、その場で「そうすることで、信じるタイミングが変わってゆくのが目に見えるようにした」という言葉を準備した。

 

-警察のチーム長であるチョン・ヘジンのキャラクターがとても良かった。通常こういう映画で、潜入捜査官を送り込む警察側のチーム長は男性が担いがちだが。最後の退場が残念でもあった。

▶残念な部分があるとすれば、すべて僕のせいだ。わざわざ女性にしようと思ってあのキャラクターを書いたわけではない。『新しき世界』ではチェ・ミンシク先輩がそういう役をやったが、元々のシナリオ草稿では、チーム長の役割は今よりも少なかった。チョン・へジン先輩に、最初は『生き残るための三つの取引』のファン・ジョンミンのようにやってほしいと話した。ところが最初の撮影をしながら、これはやばいと思った。(そのため今度は)冷たく、鋭くやってほしいと話した。そのせいでチョン・へジン先輩が苦労していた。あるときは怒りを爆発させてほしいと頼んで、「鋭くやれって言ったじゃない」と言われたりもした。「どうも 坊やたち(アンニョン イェドラ)」と言う場面でハイタッチをするのはチョン・へジン先輩のアドリブだった。本当に良かった。だが(チョン・ヘジンは)「自分が気持ちよかったからああやったけど、キャラクターと合わないと思うから抜いてほしい」と言う。なので、全体を通してみればキャラクターに合っているだろうと話した。

 

-エンディングにおけるアクションが相対的に少ない。だからこそチョン・へジンの退場も惜しいのだが…。

▶コンテにおいて一番議論になった部分だ。僕は、ソル・ギョングとイム・シワンの対話で始まり、アクションを経て対話で終わるので、アクションが強すぎると対話における感情的な要素が弱まってしまいそうだと考えた。現場でももっとアクションを入れようという意見が多かった。だが編集でもアクションを減らした。僕は今(の内容)で間違っていないと思うけど、残念に感じられたのなら僕の責任だ。正直、チョン・へジン先輩に対しては申し訳ないという気持ちも大きい。最後の場面でのチョン・へジン先輩の出演シーンも、たくさん編集で削られた。ソル・ギョングの視線で終わるので、どうしてもチョン・へジン先輩の分量を減らすほかなかった。(ジェホとヒョンスの)二人で終わらせたかった。三つ巴の戦いになるコンテも存在したが、二人で終わらせるべきだと思った。
最後の場面を撮るとき、ソル・ギョング先輩に「俺は自殺しに行くのか」と尋ねられた。だから「曖昧な状態だったらいい」と答えたら、正確に注文してくれと言う。悩んで「イム・シワンを信じたくて行く、ということでやってほしい」と伝えると、「オーケー」と答えてすぐに撮影に入った。

 

-このところのソル・ギョングの出演作において、瞳がこんなにセクシーに映ったことがあっただろうかと思ったが。

▶暗い場面でもソル・ギョングのアイライトは輝くようにした。

 

ソル・ギョングとイム・シワン、二人のバランスを取るのは容易ではなかったはずだが。

▶撮影前、周囲ではイム・シワンがソル・ギョングに押されてしまうだろうという声が多かった。現場では、イム・シワンにより集中した。そういう部分はソル・ギョング先輩も了解していた。なので二人のバランスを取ることは難しくはなかった。

 

-最後の晩餐をパロディしそれを再び反転させるなど、印象深いカットが多いが、だとすれば誰がユダなのか。そのシーンの光源も最後の晩餐に酷似していたが。

▶特に意図したというよりは、ただ、ソル・ギョングが刑務所のキリストのように見えればと思った。格好いいだろうと。現場でもユダの席に誰を座らせればいいかという声が出たが、そこにいる人物の中には裏切るキャラクターがいないじゃないか。ただ場面だけ同じにして撮った。光源などはすべて撮影監督の功績だ。

 

-刑務所のセットは米ドラマを連想させるが。

▶最初から美術監督に、米ドラマの刑務所のようにしてくれと頼んだ。ジョージ・クルーニーの『アウト・オブ・サイト』でのように、囚人たちが刑務所で自由に遊ぶ姿が欲しかった。美術監督がひどく面白がっておられた。元々は看守たちが(囚人たちを)2階から見守り、その足元から下に降りてくるというコンテも考えたが、お金がなくてできなかった。正直、お金がなくてフェンスもやっとだった。フェンスを担当する方に一番安い価格で手配してもらって、必要な部分だけを囲った。僕も一緒に一緒に設営した。現場では皆友人のような雰囲気だったので、僕が失敗したらスタッフたちに散々野次られた。

 

-刑務所で外出から帰ってきたイム・シワンにソル・ギョングと手下たちが近寄って一緒に歩くシーンは、明らかに参照元がありそうだが。

▶映画『預言者』のエンディングを思い浮かべながら撮った。

 

-全体のカラートーンはどのように設定したのか。

マーティン・スコセッシの映画を観ると、ニューヨークを描くにあたって象徴的な色感があるだろう。そういうのができればと思った。刑務所はブラウンで、最も明るくした。二人の関係が始まるところだから。そうしておいて、段々と濃いブラックに入っていくようにした。ロシアクラブはすべてレッドで。

 

-アクションが大きく三シーンだ。水産業者襲撃シーンとイ・ギョンヨン殺害シーン、そしてエンディング。イ・ギョンヨンを殺す場面は、ソル・ギョングが暗闇の中で煙草の火を点ける場面のためにああいう風にしたのか。

水産業者の場面はさっき話した通り、2人がクラブに遊びに行ったような雰囲気にしたかった。大柄の男は007シリーズのジョーズのキャラクターを借用した。二人がお互いに力を合わせて勝つようにしたかった。暗転の場面は、最初からシナリオに、ソル・ギョングが暗闇の中で火を点ける場面を入れていた。イ・ギョンヨン先輩は何故か出る映画でことごとく死ぬので、今回はさっぱり殺してくれて有難いと話していた。

 

-イ・ギョンヨンが貿易会社のホームショッピングのCMに出る場面が印象的だが。

▶こういう映画で警察のブリーフィング場面は全部同じじゃないか。粛々とプレゼンテーションをする、そういうのをやりたくなかった。そこで地域CMを使ったら面白そうだと思った。イ・ギョンヨン先輩がイム・シワンの前事務所の振り付けチームと一緒に練習をした。『マイPSパートナー』を一緒にやったイ・ミソ、シン・ソユル、キム・ボミが商品券と引き換えに手伝ってくれた。

 

-麻薬を塩に混ぜて海に隠すのも参照元がありそうだが。

マーク・ウォールバーグの出演作に出てくる場面だ。もう少し説明を入れようかとも思ったが、台詞だけで十分に感じた。

 

-音楽が明澄だったが。鳴るべきときに鳴り、上がるべきときに上がり。

音楽のこともよく分からないので、キム・ホンジプ音楽監督にバンドベースでやってくれとお願いした。『ピーキー・ブラインダーズ』というイギリスのドラマがあるんだが、その音楽を参考にしてくれと伝えた。

 

カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門に招待されたが。

知ったのは僕が一番後だったと思う。友人たちと週に一度マッコリとホンオ(ガンギエイを発酵させたもの)の会をやるんだけど、そこにソル・ギョング先輩から連絡がきたんだ。それで友達が(祝杯の)ウイスキーを開けようと言い、すぐに移動した。そのときはすべてが最高だったと思う。翌日ソル・ギョング先輩が家に招待してくれてまた酒を飲んだが、前の日に飲んだ酒も残っていたのでキツかった。

 

-『不汗党』というタイトルやソル・ギョングが演じたジェホ、そしてイム・シワンのヒョンス、それぞれどのように名付けたのか。

▶『不汗党』は、タイトルを決めずに書いている途中でひとまず仮題としてつけた。他のタイトルを考えようとしたが、ふさわしいものがなくこうなった。ジェホとヒョンスは友人の名前だ。『マイPSパートナー』でも友人の名前を使ったんだが、ヒョンスという友達が、次の映画には自分の名前を使ってくれと言った。ヒョンスと親しい友人の名前がジェホだ。

 

-一番好きなシーンは。

▶海辺のシーンも好きだが、やはり最後の場面だ。エンディングでイム・シワンが車から空を見る表情も良いし。最初にソル・ギョングが車から空を見る場面と意図的に交差させたが、本当に良かった。

 

-次の作品は。

▶70年代の大統領選挙に関して描いたシナリオがある。朴正熙元大統領と金大中元大統領が争った選挙だ。DJ(金大中)の参謀たちが主人公だ。地域感情がどのように作られたか、進歩派といえどクリーンなわけではない、そういう話をしたい。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

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