映画『名もなき野良犬の輪舞』応援記事置き場

2018年5月公開の映画『名もなき野良犬の輪舞 (原題:不汗党) 』応援用ブログです。翻訳は素人です。

【イム・シワンインタビュー】cine21 No.1105

イム・シワンインタビュー

出典:cine21 No.1105 2017/5/16

原文:

www.cine21.com

 

革新的に悪い

イム・シワンが変わった。真っ黄色な頭をして眉をしかめ、荒々しい卑語を吐く姿を見たことがあっただろうか。顔に血の跡まで付けて、図体が自身の優に二倍はあるであろう、目をふてぶてしく吊り上げる男に向かって拳を食らわせる彼の姿を、ということだ。前作『ワンライン/5人の詐欺師たち』でもイム・シワンはすでに融資詐欺を働く犯罪者ミン代理役を演じはしたが、実はミン代理は映画の中で悪態のひとつも吐かず、そればかりか拳も使わない、慎ましやかな犯罪哲学を持った人物だった。そのためイム・シワン特有のやわらかな眼差しを武器に相手の心を揺らしておきながら、後に裏切るキャラクターを完成させることができた。あたかも、ドラマ『ミセン-未生-』の新入社員チャン・グレのイメージを大きく損なわないライン上で見せられる、最上の変身のようだった。しかしビョン・ソンヒョン監督の『不汗党:悪い奴らの世界』で彼が演じるキャラクターヒョンスは、イム・シワンに関するあらゆる先入観をぶち壊すのに充分だった。「初めはプレッシャーがとても大きかった。 今までやってきた作品の中で、今回が演技的に一番難しいだろうと思った」最初シナリオを読んで、ヒョンスについて大きいものから小さなことまで心配が先に立った彼は、「もっと多くの経験を積んだ後に受けるべきじゃないかと思うほど」出演可否について深く悩んだ。

イム・シワンは、映画の中の多様な「不汗党(=狼藉者)」の中でも指折りの悪、ヒョンスを演じる。ヒョンスはある秘めた理由から監獄暮らしをしていたところ、大物級のやくざジェホ(ソル・ギョング)の目に留まり「革新的なトライ(頭のネジが飛んでるヤツ)」というあだ名まで得ることになる粗暴なキャラクターだ。ジェホは自らをして「どんな人間も信じずにただ状況だけを信じる」冷血漢だと称するやくざ者。互いに騙し騙される裏切りの楽しみの中に生きるやくざと売人たちの世界で、ジェホはただ一人ヒョンスの貪欲な瞳を気に入る。

「今回撮影現場でとても不思議な経験をした。撮影に入る前は「こんなに大変そうな映画を僕が上手くやれるのかな、しんどすぎるんじゃないかな」という心配が先に立ったけど、撮影しながら、嘘のように気が変わった自分を見つけた。作品に参加する中で、こんなにしんどさを感じずに撮ることもできるんだな、ってこと(笑)」イム・シワンは撮影中、すでに思い出せもしないほどややこしく難しいアクションコンセプトの説明を聞きながらも、「ヒョンスという人間についてどんどん明確になっていく」気持ちになった。「あえて監督と話さなくても分かる、そういう瞬間があったんだ。不思議だった」

イム・シワンは複雑な感情演技だけでなく、アクション演技にも挑戦した。監獄生活の中でジェホの目に留まるヒョンスは、出所後より恐ろしい黒社会に飛び込むことになる。そこからヒョンスはジェホの庇護の下、やくざ連中を相手に血肉の飛び交う激しい争いに巻き込まれていくのだが、その視覚的ショックは、この映画が苛烈な香港ノワール映画群を先達としていることを思わせる。「『インファナル・アフェア』を観て感じた俳優たちの本当(に起こっていること)のような演技を、僕も感じることができた」と話すイム・シワンは、映画全編にまたがり観客を驚かせるアクションシーンを3、4回も繰り返し見せてくれる。残忍でもあるが、これまでにないイム・シワンの果敢な演技を見ることができるということが、話題としてより長く残るだろう。

荒々しい悪態演技も、アクション演技も、さらには激しいキスシーンも「何ひとつ難しくなかった」と笑いながら話すイム・シワンは、今や(兵役義務による)軍入隊を前にしている。「台詞が一言もない作品をやってみるのはどうかなと考えてみたこともある。難しいからこそ挑戦してみたい気になる」イム・シワンの挑戦には限界のラインが必要ない。「僕が出演した作品がカンヌ国際映画祭に出品されたという事実が、これから僕の作品活動にどんな影響を及ぼすか、正直僕も楽しみだ」その期待は、我々が彼の次の挑戦を一日も早いと渇望する理由でもある。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

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【ソル・ギョングインタビュー】cine21 No.1105

ソル・ギョングインタビュー

出典:cine21 No.1105 2017/05/16

原文:

www.cine21.com

 

その男のメロ

「先輩をパリッとさせたいんです」ソル・ギョングが映画『不汗党:悪い奴らの世界(原題)』に合流することになったのは、ビョン・ソンヒョン監督のこの一言のためだった。「ビョン・ソンヒョン監督の以前のインタビューを読んでみた中に、こういう回答があった。『マイPSパートナー』にチソンをキャスティングした理由は、彼の品行方正なイメージをしわくちゃにしてしまいたかったからだ、というんだ。とても面白い表現だと思って私も尋ねてみた。「俺もしわくちゃにするつもりか?」そしたらビョン監督がこう答えたんだ。「先輩は元々しわくちゃなイメージなので、パリッと伸ばしたいです」どんなに面白く、率直な答えだったか」

『不汗党』のジェホは、ビョン・ソンヒョン監督が新たに発見したソル・ギョングの「パリッとした」姿だ。ポマードで撫でつけた髪にブランド時計、きっちり仕立てたスーツ姿の不汗党(=狼藉者)。ジェホは、『公共の敵』シリーズのカン・チョルジュン、『監視者たち』のファン班長などを通し鈍重で線の太い俳優としてのイメージを構築してきたソル・ギョングのこれまでの姿とは様々な面で違う人物だ。これまで彼が担ってきた役が、日常の粗雑さにおいて研ぎ澄まされた感覚と本能を備えたキャラクターの魅力を悟らせてくれたとするならば、『不汗党』のジェホはより漫画的で様式的であるものの、この新たな様式の中で動くソル・ギョングの姿を見つける新鮮さを教えてくれる人物だ。まるでコミックの一場面に登場するような漫画的な人物を演技するということは、ソル・ギョングにとっても新たな挑戦であったことは明らかだ。「最初は衣装のフィッティングとヘアメイクをしたんだが、死にそうな気分だった。前髪を上げるたびに落ち着かなくて「下ろしてくださいよ」と言っていたが、後になると髪を下ろす度に「上げて上げて」と頼んだ(笑)。人はずるいもので、こざっぱりした服を着ると姿勢が変わり、姿勢が変わると態度が変わった」

 人を「突き、刺し、切るときも」その対象の目をしっかりと見据える「不汗党」ジェホにも、揺らぎの瞬間が訪れる。彼がキリストのように君臨していた監獄に新たに入ってきた新人ヒョンス(イム・シワン)と相対したときだ。誰も信じずに生きることで今の座を守ってこれたと考えるジェホが、完全に心を開くことはできないと思っていたヒョンスに対し、次第に自身の内情を露わにしていく過程を見守ることは、『不汗党』の妙味のひとつだ。ソル・ギョングはヒョンスについてのジェホの感情が「愛」だと力を込める。「男女間の愛だけが愛か? 誰かに対し、それまで一度も感じられなかった特別な感情を感じたなら、私はそれもまた愛であろうと考える」彼によると、『不汗党』はノワール映画であると同時に二人の男のメロ映画であるということだ。「人を信じるな、状況を信じろ」と言っていた悪漢が人を信じるようになり、純粋さをとどめていた青年が非情な大人になっていく話。彼らの関係の中には誰も入り込めない強い愛情があるとソル・ギョングは言う。

一方、『不汗党』はソル・ギョングの新たな決起を感じさせてくれる作品でもある。「『ルシッドドリーム/明晰夢』を終えた後だった。にわかに、こう思った。「しっかりしないと俺は終わりだな」。誰を責めるわけでもなく、自分自身に向けた言葉だった。これまで映画をあまりに簡単に考えていたと思うようになった。映画というものは答えがなく、終わりもなく考えていかなければならない課題だというのに」『西部戦線 1953』と『ルシッドドリーム』の興行不振と共にソル・ギョングに訪れた俳優としての危機意識は、彼をして『殺人者の記憶法』(ウォン・シンヨン監督)を選択せしめ、『不汗党』という冒険をさせるに至った。特に今回の映画で彼に大きな刺激を与えたのは、若い映画人たちとの出会いだった。「ビョン・ソンヒョン監督、チョ・ヒョンレ撮影監督、ハン・アルム美術監督、この三人から多くのことを学んだ。人生にひとえに映画しかない連中だ。惰性に溺れていた当時の私にとって、良い刺激剤になってくれたと思う」再び演技の刃を研ぎ直しているベテラン俳優に、休む気は当分ない。ある学生の自殺を巡って起こる出来事にスポットを当てた『親の顔が見たい』(キム・ジフン監督)が彼の次作だ。「俳優同士殴り合いの演技を楽しみにしている」と、ソル・ギョングは目を輝かせた。まるで初映画のクランクインを前にした新人俳優のように。

 

翻訳:@TheMercilessJPF

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